2020.07.18

CARS

BMW 2シリーズ・グランクーペとメルセデスCLAに乗る 4ドア・コンパクト・カー新時代のツートップ!

BMWの参戦でにわかに脚光を浴びる4ドア・コンパクト・カー。2代目となって完成度を著しく上げたメルセデスのCLAクーペと、BMW 2シリーズ・グランクーペに乗って、その本気ぶりに感心した。 


村上 いまなぜコンパクト・カーの時代なのか。いちばんはっきりした理由は、これまでクルマ舞台のセンターだったひとクラス上のクルマ、エンジン的にいえばBMWの3シリーズを中心とするようなクルマがどんどん大型化して、その結果、1サイズ下のクルマが、普通にみんなが使うサイズとして最適なものになってきた、ということだと思う。


齋藤 その流れが見えやすくなってきた。車種が増えてきて。


村上 その転機がいつ頃だったのかをもう一度考えてみると、BMW3シリーズのボディ全幅が1m80cmを超える超えないと話題になったあたりがポイントだったよね。というのも、日本のタワー式の駐車場の多くが最大全幅1.8m以下となっている所が多かった。


齋藤 5世代目となるE90の時だね。


村上 E90はアウター・ドア・ハンドルを薄型の日本専用型に換えて、全幅を1.8mに収めた仕様が輸入されることになった。


荒井 日本以外でもそういう流れ?


齋藤 全幅1.8m境界を気にするのは主に日本で顕著なものだと思うけれど、車体サイズの大型化が理由で、ひとつ下のクラスに光が当たり始めているのは欧州でも同じじゃないの。向こうで気にされるのは全幅よりむしろ全長だけどね。4.5~4.6mぐらいのところに心理的な境界があるように思う。だから、BMWもメルセデス・ベンツも3シリーズやCクラスの全長を伸ばすことに長い間抗っていたわけでしょ。


村上 要するに、E90の登場前後が節目だったということ。今回の特集で重要なのは、コンパクト・カーにセダン・タイプが増えてきたこと。3ボックスと言い換えた方がいいかな。アウディだけは早くからA3にセダン・ボディを用意してきたけれど、その理由は、中国や北米では2ボックスのハッチバックがあまり好まれないから、というのが主な理由だった。ところが、メルセデス・ベンツが4ドア・クーペだけでなく、窓枠をもったセダン型ボディを加え、BMWもついに4ドア・クーペの投入に踏み切った。


新井 日本への輸入はまだ先のことでしょうが、BMWはセダン・ボディもすでに発表済みです。


村上 メルセデス・ベンツ日本の社長は、年頭会見の挨拶で、これからはAクラスが主力のひとつになると明言していた。Aクラスはこれまで紆余曲折があったけれど、いまはコンベンショナルな横置きエンジンの前輪駆動コンパクト・カーになっていて、さまざまなボディ・タイプを用意するようになった。BMWも3シリーズが現行型にフル・モデルチェンジして一気に大型化した後に、2シリーズの3ボックス4ドア型を出してきた。これから2シリーズと1シリーズが主力になっていくと受け止めていいんだと思う。


荒井 それとね、こうやって新しいクラスへの移行、展開を計っていかないと、ブランド・イメージを若々しく保つことができない。


村上 と同時に高齢化する世の中で、大きなクルマからダウンサイジングしてくるひとたちの眼鏡にかなうものである必要もある。


荒井 エントリー・モデルでありながら、クルマをよく知った大人の要求にも応えられるものということね。


村上 つまり、このクラスがクルマ舞台のセンターになりつつある、いやすでになっているという前提に立った、本気の作りになっていることが求められている。もうひとつの要因として、高級感だとかハンドリング性能だとかスポーティネスだとか、後輪駆動モデルが明らかに優位だった時代が、電子制御技術の進化を柱とした前輪駆動モデルの技術開発が深化して、変わってきたということでしょ。前輪駆動とその4WDモデルによって、これまでの不利を克服して、後輪駆動に匹敵するものになってきた、ということがある。さらに言うなら、横置きエンジンによる前輪駆動とその4WDの方が、縦置きエンジンによる後輪駆動やそこから派生した4WDよりも、ボディ外寸を小さくする上で確実に有利だということが、いま再び大きな意味をもってきたともいえそうだよね。


新井 ゲームチェンジャーとなったのは先代Aクラス。BMWの参入によっていよいよ決定的になった。


始めに空間設計ありき

村上 ようやくここで乗ったクルマの話に辿り着いたわけだけれど、BMW2シリーズの4ドア・クーペ、M235iグランクーペ。これに乗って本当に感心した。このクラスのクルマを本気で作っているんだなということがよくわかるものだった。


荒井 吊るしの状態でも665万円もするけどね。絶対的には安くない。


新井 現時点のシリーズ・トップ・モデルで、メルセデスの場合だとAMG35に相当するグレードなので。


村上 M235iは排気音とかにそうとう演出が入っているなとは思ったけれど。デキは素晴らしかった。3シリーズの代わりにするんだという意気込みを感じたよ。走らせての感触も3に近いと思った。


荒井 排気音が勇ましいよねぇ。


齋藤 石橋を叩きに叩いて、いざこれで行くとなったら、一切言い訳なしというのがBMWの流儀だから、後輪駆動と比べられようが上のクラスと比べられようが俺たちには自信があると表明するものになっている。電子制御ダンパーの力を借りてのこととはいえ、これだけの高性能モデルにして乗り心地も納得いくものになっている。306psを発生するエンジンを十全に使いこなす脚でこの乗り心地だったら、文句のつけようがない。3シリーズにできてFWD系1/2シリーズにできないことって、6気筒エンジンを積めないということだけだよね、こうなると。


村上 ハンドリングを楽しもうとして走らせると、FRのクルマのような、踏むとお尻が出ていくような感覚がある。3シリーズ的な、FR的な感覚を楽しんでもらおうという意図が込められているんだと思った。


齋藤 強いて言えば、路面状況のよくないところで、駆動力を強く引き出そうとすると、たまにトルクステアを感じないわけではないということぐらいかな。前脚は普通のストラット式を使っているから仕方ない。ただね、脚の形式で解決しようとすると、いま1800㎜で収まっている全幅を拡げざるをえなくなってくるだろうと思う。


村上 荷室の容量もしっかり確保してあるし、後席の居住性もファミリー・カーとして使うのに問題ないものが用意されている。


新井 欧州のCセグメントの4ドア・ファミリー・カーと真っ向勝負して客を取ろうという気概がそのまま空間設計に落とし込まれている。スタイリングがちょっとぎこちなく感じるのは、始めに空間設計ありきで、デザインされいるからだと思う。


村上 さらに加えると、室内の高級感は、3や5シリーズに遜色ない。


齋藤 BMWは1、2、3、4、5、6シリーズのどれからどれに乗り換えても違和感なく、スッと運転できるものになっていると思うな。


新井 これで1.5リットルエンジンのFWDモデルだと、2シリーズ・グランクーペの車両価格は369万円から448万円までに収まる。


齋藤 かつての1.8~2.0リットルの自然吸気エンジンを積んだ3シリーズ、E36とかE46とほとんど同じ価格帯になるんですよ。全長も同じぐらいで収まっているんだよね。



はじめににスタイリングありき

村上 もう1台のメルセデス・ベンツCLAクーペに乗ったら、これは素晴らしいクルマだった。なかでも、ああ、これは1世代前からやっているだけのことはある、一日の長はあるなと思ったのが、デザインだね。パッと見て素敵で、隙がない。


齋藤 2シリーズ・グランクーペは内容を見ると、4ドア・クーペといいながら、その実、セダンなんだよ。生真面目なパッケージングにオシャレ系の衣装をなんとか着せようとしている。一方で、CLAクーペは、オシャレな衣装をそれらしくまといたかったらまずは体格とダイエットでしょうと言わんばかりで空間設計を苛めている。始めにスタイリングありき。実用車としての空間設計や車体寸法を優先するのならセダンを選んでくださいというものになっている。そこが決定的に違うよね。


新井 CLAクーペは全幅も平気で1830㎜ある。Aクラス・セダンは1800㎜で踏み止まっているのに。全長にしても2シリーズ・グランクーペより15㎝も長いんですよ。美しいスタイリング最優先は明確です。先代の初代CLAで最も高く評価された部分をさらに磨いたんです。


村上 走らせてどうかということに話を移すとね、今回のCLAクーペは250だから4WD。AMG35のひとつ下のグレードだけど、これで足りないとは全く思わなかった。


新井 実際の売れ方としてはCクラスを買う人と層が同じで、好みの違いでCクラス・セダンを買う人とCLAを買う人ではっきり分かれるそうです。層として同じなんだけど、競合はしないんだそうです。





村上 CLAを見て、Cクラスより下だなんて思う人はいないでしょ。


齋藤 遠くから並んで走ってくるCLAとCクラスを見て、事情を知らなければどっちが上でどっちが下かなんて判別できないと思う。CLAは顔を小さなクルマのそれに見せようとしていないんだよ。テイストが違うだけ。巧妙かつ思慮深い。


村上 流麗で美しいスタイリングでも、これみよがしなものにはなっていない。走らせてもそれは同じで、FR的なハンドリング特性を出そうともしていないし、音も穏便。乗り心地はほんとうにいい。


齋藤 ハイパフォーマンス・カーかくあるべし、というのを背負わなくていいグレードだからだとしてもね。乗り心地はまさにメルセデス・ベンツのそれになっている。しっとりとして滑らか。上質。


荒井 でもね、インテリア、ダッシュボード回りはこれみよがしだよね。


齋藤 いかにもこれが最先端と臆面もなく主張するデザイン。


荒井 光り物の多いことにも驚くよね。新しいことは分かるんだけど、C、E、Sとは明らかに違う。


齋藤 ジェネレーション・ギャップを感じる眼前景色。若い人、そして中国市場を意識したものであることが明確に分かる。見せ方がね。スマホ世代に向けたものなんだよ。


村上 ただし、それはそれでライバルなしのものになっているわけだよ。と考えると、CLAクーペはほとんど文句のつけようがない。


齋藤 アウディも含めた三つ巴の熾烈な戦いはこのクラスでは始まったばかりだから、それぞれのブランド、の個性やメーカーとしての本質的な物の考え方のようなものが色濃く反映されていると思う。


村上 それこそまさにブランドの肝となる部分だよね。そこが明快というのは、クルマ舞台のセンターに立つのに相応しいクルマになっているということじゃないのかな。


■BMW M235i xDrive グランクーペ


駆動方式 フロント横置きエンジン4輪駆動
全長×全幅×全高 4540×1800×1430㎜
ホイールベース 2670㎜
トレッド 前/後 1565/1560㎜
車両重量 1590㎏
エンジン形式 直列4気筒DOHC 16V直噴ターボ過給
総排気量 1998cc
ボア×ストローク 82.0×94.6㎜
最高出力 306ps/5000(-6250)rpm
最大トルク 45.9kgm/1750-4500rpm
変速機 8段AT
サスペンション 前/後 ストラット式/マルチリンク式
ブレーキ 前/後 通気冷却式ディスク/ディスク
タイヤ 前/後 225/40R18
車両価格(税込) 665万円〔テスト車両:749万9000円〕


    
■メルセデス・ベンツ CLA 250 4MATIC クーペ


駆動方式 フロント横置きエンジン4輪駆動
全長×全幅×全高 4690×1830×1430㎜
ホイールベース 2730㎜
トレッド 前/後 1605/1600㎜
車両重量 1560㎏
エンジン形式 直列4気筒DOHC 16V直噴ターボ過給
総排気量 1991cc
ボア×ストローク 83.0×92.0㎜
最高出力 224ps/5500rpm
最大トルク 35.7kgm/1800-4000rpm
変速機 7段AT
サスペンション 前/後 ストラット式/マルチリンク式
ブレーキ 前/後 通気冷却式ディスク/ディスク
タイヤ 前/後 225/45R18
車両価格(税込) 539万円〔テスト車両:661万9000円〕


話す人=村上 政+荒井寿彦+新井一樹+齋藤浩之(まとめも、すべてENGINE編集部) 写真=望月浩彦


(ENGINE2020年6月号)

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