■ロシア:エレナ・ミロノワ(Elena Mironova)さん

 2年前に夫を亡くしたミロノワさん(92)は、モスクワ南東部のアパートでロックダウン(都市封鎖)を乗り切ろうとしている。毎日、近くに住む2人の娘や孫たちと電話で話している。

 ミロノワさんは、感染症の流行によるロックダウンと第2次世界大戦の体験を比べることは問題だと思っている。「戦時中、ソビエト連邦では2800万人が死んだ」。経済状況の悪化も「今回のパンデミックとは比べものにならない」とミロノワさんは語った。

■イスラエル:ロバート・ウルフ(Robert Wolff)さん

「比較はばかげている」と、フランス生まれで、今は妻と娘と一緒にエルサレムに住んでいるウルフさん(94)は言う。

 ウルフさんは仏中部リモージュ(Limoges)の実家を17歳で離れ、同国東部のアン(Ain)でナチス・ドイツ(Nazi)の占領に抵抗するレジスタンス運動に加わり、そこで逮捕されたがなんとか逃亡した。

 戦後はリモージュに戻り、米軍のラジオ修理工として働いた。「あの頃は飢えていて、とにかくみじめだった。ユダヤ人は解放されるまで追放され続けたのだ。(感染症の大流行と)比べることなんてできない」「今は本もテレビもある。文句は言えない」

 戦争が終わっても厳しい状況は続いた。「(ナチスの)協力者を見つけ出し、リンチしていた人々の残虐さは忘れない。裁判さえないこともあった」

■フランス:ガブリエレ・マニョル(Gabrielle Magnol)さん

 フランス南西部ペリゴール(Perigord)地方のサンパルドゥーラリビエール(Saint-Pardoux-la-Riviere)に住む元美容師のマニョルさん(93)は、閉じこもって暮らしている。会うのは理学療法士と医師、それにヘルパーだけだ。

 戦争が終わった時のことを、マニョルさんは喜びにあふれた日々として記憶している。「3夜連続、踊り続けた。3足の靴をすり減らした」。だが、喜びの日々に続いたのは、食料配給だった。

 ロックダウンとの大きな違いの一つは、戦後は店が再開しても品物が何もなかったことだ。「私たちが経験したのは、本当の物不足だった」

 車いす暮らしの今、新型コロナウイルスはもちろん怖いが、戦争の恐怖に比べたら何でもないと話す。

「占領下の暮らしと外出制限では、共通するところなど何もない。あのときは自分たちの生命に不安を感じていたし、飢えていた」 (c)AFP/AFP bureaus