【5月11日 AFP】欧州における第2次世界大戦(World War II)の終結から75年を経た今、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的な大流行)が、戦後最悪といわれる経済的・社会的大混乱をもたらしている。

 AFPはイスラエル、英国、フランス、ドイツ、ロシアの5か国で、1940年代の激変を生き抜いた人に今日の状況について思うことを聞いた。

■ドイツ:ルッツ・ラッコウ(Lutz Rackow)さん

 ラッコウさん(88)は、戦時中に育ったベルリン南東部の家に今も住んでいる。ラッコウさんにとって、今の状況は当時とはまったく異なる。

 終戦を迎えた1945年は「完全な非常事態だった」と、ラッコウさんは語る。「生活上の問題はただ一つ、どうやって食べ物を手に入れるかだった。子どもは皆、学校で給食が出たから、少なくとも1日1度は食事にありつけた。だがそれ以外は、食料はかなり欠乏していた」

 ラッコウさんは18歳になると、ベルリンのリベラルな新聞社で働き始めた。「職場までは列車で15分ほどだったが、その途上、人が住んでいそうな家は3軒ほどだった。それ以外は完全に破壊されていた」

 今日、ラッコウさんは妻とともに、ミュゲル湖(Mueggelsee)へとつながる広々とした庭でくつろぐことができる。「ここではお互いの距離を保つのは簡単だ」とラッコウさん。「恵まれている」

■英国:ジョアン・ホール(Joan Hall)さん

 戦争が始まった時、ホールさん(95)は英バーミンガム(Birmingham)で両親と暮らしていた。17歳になるとすぐに英空軍婦人部隊(Women's Royal Air Force)に入隊し、それから4年間、主に将校向けの食堂で働いた。

「戦時中は、外出して飲みに行ったり食事をしたりすることができた」とホールさんは違いを語る。「このウイルスは多かれ少なかれ、私たちを自宅に閉じ込められた囚人のようにしてしまう。大きな違いは、自由。私に言わせれば、戦時中の方がこのウイルスよりもましだった」

 一方で似ている点もあるという。「戦争が続いている時は、みんなとても親切で一緒に働き、力を合わせた。今は、このウイルスの流行で、人々が昔みたいに結束しているように見える。お隣さんがドアをノックして、手を貸そうかと尋ねてくれる。戦時中にそうだったような共同体精神があるように思える」