【5月7日 People’s Daily】中国湖北省(Hubei)武漢市(Wuhan)武昌区(Wuchang)の社区(住宅街の単位)に住む77歳の男性、杜さんは元気に料理を作っている。2か月前まで、新型コロナウイルス感染症のため入院していたとは誰も想像できないほど。呼吸が困難になりトイレにも行けない重症患者だったが、漢方薬を服用する治療で危機を脱出した。

 感染症が拡大していた期間、武昌区では各社区に漢方薬を届け、住民は予防、治療、体調回復のため服用を続けた。漢方薬はウイルスを遮断する「防火壁」となり、その成功例は「武漢モデル」と呼ばれている。

「武漢モデル」の提唱者は、新型肺炎国家漢方医学治療専門チーム代表の仝小林(Tong Xiaolin)さん。仝さんは患者の診察を重ね、感染症は肺と脾臓(ひぞう)に病因があり、正しい陽気の運行や血流が妨げられていると判断した。肺の機能を高め、気の流れを良くするための漢方薬の処方箋「武漢抗疫1号」を考案した。せきや悪寒に効く麻黄や石膏、解熱作用のある柴胡や芦根などを調合し、患者の症状に合わせて量を変えて与えた。

 武昌区は人口125万人を擁し、社区が144か所ある。国家漢方医薬管理局総指揮部と武漢市衛生健康委員会などは2月2日、各社区の医療衛生ステーションに漢方薬を届け、住民に無料で提供することを決めた。

 1月28日時点で、武昌区内で隔離されている住民のうち、感染の疑いがあるか感染が確定した人は90%に達していた。2月2日から漢方薬の投与を開始後、わずか4日後にその割合は30%に下がり、3月5日には3%前後にまで減少した。

 漢方薬を服用する患者向けにスマートフォンの健康管理アプリも提供された。患者は自分の病状や薬の服用状況を記録。さらにボランティアが電話や通信アプリ微信(WeChat)を通じて患者に症状を問い合わせ、一連の報告をもとに医師が患者の病状を判断し、服薬も調整した。

 漢方医学科学院首席研究員兼漢方医薬データセンター主任の劉保延(Liu Baoyan)さんは「自宅に隔離された患者は医師とすぐ連絡が取れないので、不安になりがち。電話やアプリを通じて遠距離でも連絡が取れることで、医師の診断を受けられるだけでなく、心の不安も取り除くことができる」と説明する。

 3月5日時点で、発熱や感染疑い、感染が確定した患者で「武漢抗疫1号」を服用した3698人のうち、90%以上が発熱、せき、たん、息切れ、下痢などの症状が治まった。発熱患者は平均1.74日で熱が下がった。

 3月25日時点で、健康管理アプリを使った患者は1万2051人で、医師と患者との通話は3万回に及んだ。このうち「武漢抗疫1号」を服用したのが4579人で、4571人が回復した。

 劉保延さんは「武漢モデルは今後の漢方薬のあり方のモデルを示した。ビッグデータやインターネットを通じて、感染症を抑えるため漢方医学のデータ化、現代化を探求していく」と意義を語る。

 仝小林さんも「感染症が発生した際、漢方薬を即座に活用することが重要だ」と力説する。今後また、社会を揺るがす感染症が発生する事態に備えるため、「武漢モデル」は新たな可能性を切り開いた。(c)People's Daily/AFPBB News