■「ありがとう」と言われた

 地元の薬剤師フレデリック・バルト(Frederic Barthe)さんは「彼らのマスクのおかげで、人々は外に出ることができるようになった」と話す。「(兄弟のマスクに)住民は守られているようだ。FFP2規格の高性能マスクや医療用マスクがなかなか到着しない中、これはとてもありがたい」

 バルトさんと隣町の薬局は地元のいくつかの協会と協力し、マスク作りにかかる費用をカバーするため、1枚につき1ユーロを(約115円)を一家に支払いたい考えだ。こうした動きについてファウジさんは、「みんなは4~5ユーロ(約460~570円)で売るべきだという。でも、連帯感からそうはしたくない」と語った。

 ラバルダック村のフィリップ・バレール(Philippe Barrere)村長によると、シリア難民の一家を定住させるという決定に全く問題がなかったわけではなく、中には「抵抗する村人もいた」という。

 だが、「学校や村の組織、仕事などを通じて」シホさん一家は村に溶け込みたいという強い意欲を示した。マスクは彼らの善意と誠意が分かる非常に良い例だ」とバレール氏は話した。

 ラバルダックの住民たちも、シホさん一家を受け入れ始めたようだ。兄弟の一人は、「僕たちのマスクを着けている人たちと時々会う」「この前は、マスクを着けた女性に『ありがとう』と言われたんだ」と語った (c)AFP/Benoît PETIT