【5月8日 AFP】フランス南西部の小さな村、ラバルダック(Lavardac)は、新型コロナウイルスの感染拡大阻止を目的に全土で実施されているロックダウン(都市封鎖)の影響で静まり返っている──ある質素な家の2階の窓から漏れ響いているリズミカルな音を除いては。この音は、5人のシリア系クルド人が、地域住民のためにミシンでマスクを縫っている音だ。

 5人は難民のムスタファさん、モハマドさん、ファウジさん、ヘクマットさんの4人兄弟と義理の弟リアドさんのシホ(Shikho)さん一家だ。彼らは地域住民への「連帯感」、そして2016年から定住しているラバルダックへの感謝を込めて、マスクを作っている。

 5人は工房となっている狭い白壁の部屋で、カラフルな布を切り抜いたり、縫ったり、折ったりする作業を続けている。アイロン台の上に積まれた何十枚もの手作りマスクは、近くの薬局に届けられるのをじっと待っている。

「外出できない地元の人たちの役に立ちたいと思った。家から出られないとはどういうことか、僕たちは知っている」と長男のムスタファさん(31)は語る。「僕たちの場合は内戦だった」

 仕立て職人として修行を積んだムスタファさんと弟のモハマドさん(24)は当初、ラバルダックで仕立て工房を開く計画だった。しかし、3月17日の全国的なロックダウンで全てが変わった。

■友情のジェスチャー

「私たちのところには布が山ほどあった。まずは自分たち家族のためにマスクを作ることから始めた」とモハマドさん。

「友人や住民のために作ったらどうか?って思った。役場は私たちを助けてくれた。だから私たちは、お返しがしたかった」

 時折、姉妹や母親ラジャさんの助けも借りながら、5人は布を3枚重ねた洗えるマスク約2000枚を作った。彼らの行為には地域の住民らも注目した。