■中国起源説

 中国では、武漢(Wuhan)市保健当局が2019年12月8日に最初の症例が確認されたと報告している。

 1月に英医学誌ランセット(The Lancet)に掲載された研究論文によると、武漢市内で確認されたこの最初の患者が発症したのは12月1日だという。

 この時系列は、ウイルスの遺伝子進化の道筋をたどる調査によってほぼ裏付けられている。

 これまでのところ、新型コロナウイルスのサンプル1万5000個以上のゲノム(全遺伝情報)が解析されている。ウイルスの増殖に伴って複数の遺伝子変異が生じるが、ウイルスの毒性を変化させる変異はまだ見つかっていない。

 アリゾン氏によると、遺伝子配列に残る変異は1か月に約2回の頻度で発生するため、研究者らはこの跡をたどることができるという。

「二つのウイルスを比較すれば、何個の変異で隔てられているかを数えることができる」と、アリゾン氏は説明した。このつながりをたどれば「すべての感染ウイルスに共通する祖先」が見つかる。

 英エディンバラ大学(University of Edinburgh)のアンドルー・ランバウト(Andrew Rambaut)氏は一般公開されたゲノム配列データを利用し、「多様性の欠如は、この種のウイルスすべてが比較的最近に出現した共通祖先を持つことを示している」ことを明らかにした。

 この祖先は2019年11月17日頃(誤差範囲は8月27日~12月29日)に出現した可能性があると、ランバウト氏は推定している。

 また、新型コロナウイルスの系統樹をさかのぼる調査を世界保健機関(WHO)と共同で実施した英インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)は、共通祖先が12月5日(誤差範囲は11月6日~12月13日)に中国で出現したと推測している。

 インペリアル・カレッジの疫学者エリック・ボルツ(Erik Volz)氏によれば、12月と1月に武漢で収集された新型コロナウイルスの最初期の遺伝子配列はすべて「ほぼ同一の遺伝情報を持っている」という。

「現在世界各地に広まっているウイルスは皆、これら武漢の近縁系統から枝分かれしている」と、ボルツ氏はAFPの取材に語った。

 だが専門家らは、流行病が単一の時点から始まるのではなく「複数の発生点から複数回にわたって」播種(はしゅ)されると考えていると、ボルツ氏は続けた。

 これら「播種」の発生日を推定した結果は、欧州と北米の多くの都市における流行が1月半ばから2月初めにかけて始まったことを示唆していると、ボルツ氏は指摘した。

 イタリアの研究では、新型コロナウイルスが同国北部ロンバルディア(Lombardy)州に到達したのは1月の後半から2月初めの間だったことが示唆されている。最初の感染が確認されたのはその数週間後の2月20日だった。(c)AFP/by Amélie BOTTOLLIER-DEPOIS with AFP bureaus