遺伝子でたどる新型コロナの起源 中国最初の症例前に他国で感染あったのか
このニュースをシェア
【5月7日 AFP】中国が新型コロナウイルスの最初の症例を報告したのは2019年12月だ。だが、その時点ですでに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は静かに広まっていたのだろうか。この問題を解明するために、科学者らはウイルス自体の進化の跡をたどることで「患者第1号」を見つけようとしている。
この調査は新型コロナウイルスの系統樹をさかのぼって調べるもので、最初の感染症例が公式に記録される以前に、別の国でウイルスが拡散していたかどうかを明らかにする助けになる可能性もある。
フランスでは、2020年1月下旬にクラスター(感染者の集団)が発見された。だが、抗菌薬の専門誌IJAAで発表された最新研究では、新型コロナウイルスがその1か月前にはすでに同国内に存在していたことが示唆されている。
仏パリにあるアビセンヌ病院(Avicenne Hospital)とジャン・ベルディエ病院(Jean-Verdier Hospital)でインフルエンザに似た症状で集中治療を受けた患者14人から採取した検体のレトロスペクティブ(後ろ向き)分析を行った結果、患者の1人が新型コロナウイルス陽性であることが明らかになった。この患者は仏国内に住む42歳の男性で、中国への渡航歴はなかった。男性が入院したのは12月27日だった。
アビセンヌ病院感染症部門を統括するオリビエ・ブショー(Olivier Bouchaud)氏によると、新型コロナウイルスは初め「静かに、誰からもその存在を気付かれることなく」拡散するという。
そのため、より以前の感染の証拠が見つかりさえすれば、多くの科学者が推測していたことが裏付けられるだろうと、ブショー氏はAFPの取材に語った。
その他の国々でも、より以前に感染が国内で発生していた可能性があることが明らかになりつつある。米国では、カリフォルニア州で感染の疑いがある複数の死者に病理解剖を実施した結果、最初の公式症例の1月21日より前に感染者がいたことが判明した。
だが、仏モンペリエ大学(University of Montpellier)の国立科学研究センター(CNRS)のサミュエル・アリゾン(Samuel Alizon)氏は、孤立した症例と「流行の波」の発生源とを区別することが重要だと注意を促した。