【5月7日 Xinhua News】中国で不眠に悩む若者が増えており、「スリープエコノミー」が新たな市場を形成し始めている。中国睡眠研究会の調査によると、成人の不眠症罹患(りかん)率は38.2%。3億人を超える中国人が睡眠障害を抱えている計算になる。

 江西省(Jiangxi)南昌市(Nanchang)に住む李莉(Li Li)さん(29)は毎晩、寝る前に安眠スプレーを枕に吹きかけ、睡眠状態を測定するリストバンドを着け、スチームアイマスクと耳栓をすることが「ルーチン」となっている。

 李さんのように睡眠の質を高めるための「安眠グッズ」を使う若者が増えている。睡眠に関する4億5千万人分のビッグデータをまとめた「中国睡眠指数報告」によると、昨年、不眠の症状がある人の36.7%が1990年代~2000年代生まれだった。安眠グッズを購入したことがある人も62%に上っている。

 若年層に睡眠障害が増えている理由について、中国睡眠科学分会の孔祥(Kong Xiang)委員は「仕事のストレスに加え、スマートフォンなどの電子製品も睡眠の質の低下につながっている」と指摘した。

 京東ビッグデータ研究院がまとめた「オンライン睡眠消費報告」では、80年代生まれと90年代生まれが抱える睡眠の悩みは中高年より深刻だった。消費データによると、睡眠関連の消費の伸びは95年~99年生まれが最も大きかった。

 睡眠の質の向上に対する切実なニーズが、中国に新たな市場を生み出した。寝具などを含む広義の睡眠市場規模は1兆元(1元=約15円)に達すると推計されている。

 最新の「オンライン睡眠消費報告」によると、昨年の安眠スプレーの取扱高は前年比34倍に増え、足湯用入浴剤やアロマ商品も50%以上増加した。主な購買層は26歳から35歳のホワイトカラー、大学生、大学教員、小都市住民だった。孔氏は「消費者のニーズは全体的に睡眠状態の測定から睡眠の改善へと変化している。先進的な技術を駆使した医学的根拠のある商品が求められるようになった」と指摘した。

 全国衛生産業企業管理協会睡眠産業分会の汪光亮(Wang Guangliang)執行会長は「中国の睡眠市場は依然として開発途上にあり、競争相手の少ない未開拓市場だ。消費者のニーズに加え、ホームテキスタイル産業の高度化や睡眠医学とスマートテクノロジーの融合が進むことで、睡眠産業は中国ヘルスケア消費の新たな成長分野になる」との見方を示している。(c)Xinhua News/AFPBB News