【5月5日 AFP】ロシアの伝説的なボリショイ・バレエ団(Bolshoi Ballet)のダンサー、マルガリータ・シュライナー(Margarita Shrainer)さん(26)とイゴーリ・ツビルコ(Igor Tsvirko)さん(30)のカップルの寝室には、中央にバレエ用のリノリウムとバーが置かれている。

 新型コロナウイルスによる都市封鎖(ロックダウン)が始まって以来、ソリストである2人はモスクワの自宅でダンス技術を維持するために全力を尽くしてきた。

 ツビルコさんとシュライナーさんの体は相変わらず引き締まってみえる。

「イワン雷帝(Ivan the Terrible)」などで主役を演じてきたボリショイのリーディング・ソリストであるツビルコさんは、「太ったとは思わない。それが一番大事だ」と語る。

 一方、ファースト・ソリストとして「コッペリア(Coppelia)」や「カルメン組曲(Carmen Suite)」で大役を演じてきたシュライナーさんは、テニスボールで足をマッサージした後、開脚トレーニングを始めた。

 一緒になって1年以上たつ2人は、バレエ団が所有するワンルームのアパートに住んでいる。同じブロックには他にも数人のダンサーが居住している。

 ロックダウン開始から1か月以上が経過した5月初旬、ボリショイ・バレエ団は初めてオンラインクラスを開催した。授業はビデオ通話サービス「ズーム(Zoom)」で行われており、講師は自分の寝室でピアノの伴奏に合わせてステップを踏んでいる。

 ロックダウンが始まると「ボリショイは、体調を整えて、自主隔離の中でバレエをする方法を見つけなさい、というとても重要で価値のあるアドバイスをしてくれた」とツビルコさんはいう。「それで私たちは、リノリウムやバーを探した」

 通常、ダンサーは自宅でトレーニングをしないため、そのような設備を持っていないという。新しい備品を取りに行くことができないため、バレエシューズも「すり減っている」とツビルコさんは語った。

 ダンサーたちはそれぞれ自分なりにロックダウン中の日課を作り、トレーニング用の器具を工夫しなければならなかった。

「9月前に仕事を再開する人はいないだろう。何かが再開するとも思えないので、長期休暇に備えて気を引き締めている」とツビルコさん。

 元の状態に戻るのは簡単ではないだろうと、ダンサーたちは認めている。シュライナーさんは体力的にも「出演者にとっては厳しい復帰期間が予想される」と語った。

 映像は4月29日撮影。(c)AFP/Anna MALPAS