【5月4日 AFP】白いアラブ馬のジェニー(Jenny)は毎朝、ドイツ・フランクフルトにある馬小屋を出て、付近の散歩に出掛ける。人々に笑顔を与えながら自由に街を歩くジェニーは、新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)下に置かれた多くの人に希望を与えている。

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「誰もがコロナウイルスによる制限の中で暮らさなければならないが、ジェニーはいつも通り自由だ」。飼い主のアナ・ヴァイシェデル(Anna Weischedel)さん(65)はAFPにこう語る。

 ジェニーは、フランクフルトを流れるマイン川(Main River)ほとりの自然豊かな地域、フェッヘンハイム(Fechenheim)周辺を10年余り、独りで散歩してきた。25歳とすでに高齢のジェニーは、住民の間で常に愛されてきたが、その人気はこの数週間でさらに高まった。アナさんは「時間が増えて、人々はより彼女に気づくようになっている」と話す。

 アナさんの夫ヴェルナーさん(80)が電動スクーターでジェニーのいつもの散歩コースを走り、ジェニーに帰る時間だと伝える午後4時ごろ、ジェニーの散歩は終わる。花屋の元店主であるヴェルナーさんによると「それから彼女はゆっくりと家に戻る」。

 ヴァイシェデル夫婦によれば、ジェニーは長年の散歩でも一度も問題を起こしたことがなく、地元当局も人気者のジェニーを受け入れてきた。

 ジェニーを動揺させる唯一のものはヴェルナーさんと同じく、花火の音だ。第2次世界大戦(World War II)中の幼少期、フランクフルトに落とされた爆弾の音に今も悩まされているヴェルナーさんは「ジェニーと私は大みそかになると、一緒にちぢこまっている」と笑顔で語る。

 動物好きで、歯をほとんど失ったチワワ1匹と鳥100羽余りを飼っているヴァイシェデル夫婦は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)を難なく乗り越えようとしている。ヴェルナーさんは肩をすくめながら「私たちは戦争を生き延びた。コロナも生き延びられる」と話している。

 映像は4月28日撮影。(c)AFP/Michelle FITZPATRICK