【5月2日 AFP】「So what?(だから何だ?)」。たったこれだけの言葉がこれほど激しい論争を巻き起こすことはめったにない。

 ブラジルのジャイル・ボルソナロ(Jair Bolsonaro)大統領は先月28日、新型コロナウイルスにより同国で5000人以上が死亡した事実に関して記者から質問を受けた際、「だから何だ?」と返した。

「だから何だ? すまん、私にどうしろと言うのだ?」。ボルソナロ氏はそう答え、自身のミドルネームはメシア(Messiah、イエス・キリスト)を意味するメシアス(Messias)だが、「私に奇跡は起こせない」と冗談を飛ばした。

 極右のボルソナロ氏からとっさに出たこの発言を受け、知事や政治家、医療専門家や報道関係者らが一丸となってボルソナロ氏はあまりに配慮に欠けていると怒りをあらわにした。

 他国の多くの指導者と異なり、ボルソナロ氏はこれまで一度も、病院を訪問したり、新型コロナウイルスの犠牲者や遺族、人工呼吸器や病床不足を訴える医療従事者らに対する連帯を示したりしていない。

 ボルソナロ氏は、経済恐慌を防ぐため人々に仕事へ行くよう勧めてきた。同氏の最も熱心な支持者らは、路上で外出禁止令に対する抗議デモを繰り広げている。

 ブラジルではこれまで、公式統計で9万1000人以上が感染したとされるが、科学者らは実際の数はこれより15〜20倍多い可能性があると警告。死者数はすでに6300人に達し、イタリアや米国のような最悪なシナリオに直面している。

 政治アナリストのアンドレ・ペレイラ・セザル(Andre Pereira Cesar)氏は、「大統領がウイルスに対し戦時の指導者としての態度を取らなければ、彼は歴史や有権者らによって厳しく裁かれるだろう」と述べた。(c)AFP