■結果が入り交じっているのはなぜか

 米主導の研究結果が発表されたのと同日、より小規模ではあるがレムデシビルについての別の研究結果が英医学誌ランセット(The Lancet)に発表された。この研究論文では、統計学的に有効性が示されなかったとの結果が記された。

 ランセットに掲載の研究で対象となったのは中国・武漢(Wuhan)の感染患者200人超だけで、しかも患者が十分に集まらなかったとの理由から研究は早期の中止を余儀なくされていた。

 英ロンドン大学衛生熱帯医学大学院(London School of Hygiene and Tropical Medicine)の医療統計学専門家、スティーブン・エバンス(Stephen Evans)氏は、この小規模な研究について、「説得力のある結論を引き出すにはサンプル数が少なすぎる」と指摘している。

■いつ使えるようになるのか

 レムデシビルの投与は、臨床試験などを通じて、世界の国々ですでに行われている。米国では近く、食品医薬品局(FDA)によってレムデシビルの「緊急使用承認」が出され、公式の認可を前に、その使用がさらに拡大するとみられている。

 レムデシビルの製造は難しく、患者への投与も注射となるため、当初の供給については制限が設けらえるとの見方が根強くある。ただ、ギリアド・サイエンシズのダニエル・オデイ(Daniel O'Day)会長は先月29日夜、すでに投与量150万回分の準備がほぼ整っていると公開状で明らかにしている。

 同社はさらに、吸入剤の開発についてもその可能性を探っているが、まだ詳細は明らかにされていない。

■どのように効くのか

 レムデシビルはウイルスを直接攻撃する薬に分類される。ウイルスのゲノムに入り込み、そこでウイルスの自己複製プロセスを中断させるのだ。

 ギリアドの医務責任者であるマーダッド・パーサー(Merdad Parsey)氏は先月30日、発症後の時間が短い患者ほどレムデシビルに対する反応が良いと指摘しているが、その一方で重症患者にもある程度の効果があるようだとも述べている。

 これは新型コロナウイルスが、肺損傷につながる異常な免疫反応「サイトカインストーム」を引き起こすためだ。これについてパーサー氏は、「ウイルスの複製を制限することで、炎症が抑えられ、肺損傷の患者数を減らすことができ、患者らから人工呼吸器をはずすのを早めることができる」と説明している。(c)AFP/Issam AHMED