【4月30日 AFP】(写真追加)英国で、新型コロナウイルスと最前線で闘う医療従事者らのために寄付を募り、3000万ポンド(約40億円)以上を集めたトム・ムーア(Tom Moore)さんが30日、100歳の誕生日を迎えた。お祝いのため、政府は空軍による儀礼飛行を実施し、14万人が誕生日のカードを送った。

 第2次世界大戦(World War II)で従軍したムーアさんは今月、国民保健サービス(NHS)の医療従事者やボランティアらのために寄付を募ろうと、自宅の庭を歩行器を使って100回歩くことに挑戦。

 その取り組みと謙虚さで一躍時の人となり、「トム大尉(Captain Tom)」という愛称で知られるようになったムーアさんは、現時点で3000万ポンド超の寄付を集めた。

 ムーアさんの100歳の誕生日を祝うメッセージを送った人の中には、ボリス・ジョンソン(Boris Johnson)首相やチャールズ皇太子(Prince Charles)もいる。

 バースデーカードは世界中から届き、ムーアさんの孫の学校の大きな講堂をいっぱいにした。また数千人の子どもたちから絵も贈られた。

 30日朝には英空軍が、通常第2次大戦の記念式典などに登場する戦闘機スピットファイア(Spitfire)とハリケーン(Hurricane)を出動させ、イングランド南部ベッドフォードシャー(Bedfordshire)にあるムーアさんの自宅の上空で儀礼飛行を行った。

 テレビで生中継された映像には、ジャケットにネクタイ姿、胸に勲章を着けたムーアさんが、同機に向かって手を振る様子が捉えられていた。

 ムーアさんはBBCの取材に対し「私は覚えています、あの戦闘機が平和の中ではなく、怒りと共に飛んでいた時のことを」と語った。

 一方英陸軍はムーアさんを、「老いも若きも、あらゆる世代に勇気を与える模範」とたたえ、エリザベス女王(Queen Elizabeth II)の承認を受け、名誉大佐の称号を授与すると発表した。

 ムーアさんは自身に向けられた注目について「自分の人生にこんなことが起きるなんて、予想だにしていなかった」と驚きながらも、声援を送ってくれたすべての人に感謝した。

 名誉大佐の称号についても、「とても感動した」というムーアさん。「私は今でもトム大尉ですよ、それが自分の身の程ですから。だけどもし皆が『大佐』と呼んでくれるなら、そうですね、それは大変ありがたいことです」と話した。(c)AFP/Alice RITCHIE/Pauline FROISSART