【5月1日 AFP】日光をたくさん浴びて新型コロナウイルスを撃退しよう──こんな期待を抱いて日なたに繰り出す人が、インドネシアで増えている。上半身裸で地面に横たわる兵士や、自宅の庭で日焼けを試みる若者らの姿は、イスラム教徒が大多数を占め保守的な服装を好む同国では、今まであまり見られなかった光景だ。

 アジアでは、肌の色の薄さと社会的階層の高さが関連付けられてきた歴史があることから美白意識が高い。インドネシアでも、これまで日光浴はバリ(Bali)を訪れる外国人観光客のすることだと考えられてきた。

 ところが、日光とそれを浴びることによって体内で生成されるビタミンDが新型ウイルスを不活化したり、活動を抑制したりするという根拠のない情報がソーシャルメディアで拡散してから、インドネシアの人々は一斉に日光浴を始めた。

 その期待は、米政府高官が先週、太陽光で新型ウイルスの急速な不活化に成功したとする研究結果を発表したことで、さらに高まった。この研究はまだ検証されていない段階のものだが、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が記者会見で熱心に取り上げた。

「日焼けしたくないから、いつも日なたを避けていた。でも、今は日光浴で免疫力が高まるのを期待している」と話してくれたのは、インドネシアの文化中心地ジョクジャカルタ(Yogyakarta)に住む主婦(27)だ。

 突然の日光浴ブームを受け、インドネシア政府は皮膚がんになるリスクがあることを警告。あまり日焼けしたことのない人は日焼け止めを使用するよう注意を促している。

 今や、インドネシア軍や警察でも上半身裸での日光浴が毎朝の訓練に組み込まれ、大都市では住民らが路地や広場、線路上など、あちこちで直射日光を浴びている。髪の毛をスカーフで覆いつつ袖をまくり、ズボンの裾をたくし上げた女性から、シャツを脱ぎ捨てた10代の少年、高齢者まで、少しでも多くの日光を浴びようと線路脇に集まった人々はさまざまだ。

「(新型ウイルスの)パンデミック(世界的な大流行)が始まってから、定期的に日光浴をしている」。首都ジャカルタ郊外タンゲラン(Tangerang)を通る線路の近くでAFPの取材に応じた男性は、「日光浴の後にシャワーを浴びると体が元気になる気がする」と語った。(c)AFP/Agnes ANYA, Safrin Labatu