レムデシビル、コロナ治療に「明確」な効果 米発表
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【4月30日 AFP】(更新)米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)は29日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬として注目を集めている抗ウイルス薬「レムデシビル」の大規模な臨床試験の結果、プラセボ(偽薬)と比べCOVID-19患者の回復を30%以上早めることが示されたと発表した。同研究所のアンソニー・ファウチ(Anthony Fauci)所長はレムデシビルの「明確」な効果が示されたと述べている。
レムデシビルは、COVID-19治療効果が示された初の薬となった。開発元の米製薬企業ギリアド・サイエンシズ(Gilead Sciences)もこれに先立ち、レムデシビルの臨床試験で主要目標を達成したと表明していた。
試験を監督したファウチ氏はホワイトハウス(White House)で記者らに対し、「レムデシビルには、回復までの期間を短縮させる点において、明確かつ有意で、好ましい効果があることが、データで示された」と表明。試験結果は「薬でこのウイルスを阻止できる」ことを示す証拠だと説明し、1980年代に初のエイズウイルス(HIV)治療薬となった抗レトロウイルス薬の登場になぞらえて歓迎した。
米国立アレルギー感染症研究所の発表によると、レムデシビルを投与された患者の回復期間の中央値は11日で、プラセボを投与された患者(15日)よりも31%短かった。また、致死率もレムデシビルを投与された患者では8.0%だったのに対し、プラセボを投与された患者では11.6%だった。
臨床試験は2月21日に始まり、米国、欧州、アジアの計68か所で1063人が参加した。最初の参加者は、日本で検疫が行われたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス(Diamond Princess)」から米国へと退避させられ、ネブラスカ州の医療機関で治療を受けた米国人だった。
レムデシビルは静脈注射で投与される抗ウイルス薬で、以前にはエボラ出血熱の治療薬としての臨床試験に失敗。ここ数週間は、COVID-19治療での効能をめぐる情報が錯綜(さくそう)していた。
世界保健機関(WHO)のウェブサイトで先週公開された試験結果の要旨では、中国で行われた比較的小規模の臨床試験ではレムデシビルの有効性が示されなかったとされていた。同試験に関する論文は29日、英医学誌ランセット(The Lancet)に掲載された。
中国・武漢(Wuhan)の患者237人を対象に行われたこの試験では、レムデシビルを投与した成人患者と対照群(人工呼吸器が必要だった患者は除く)とを比較。その結果、同薬の有効性は認められなかった。
ただ専門家の多くは、この臨床試験は参加者数が当初目標に達せず早期に中止されたことから、信頼性のある結論を出すには試験規模が小さすぎると指摘。ファウチ氏も「十分な研究ではなかった」と述べた。(c)AFP