【4月29日 AFP】中南米における新型コロナウイルスの流行地の一つ、エクアドルのグアヤキル(Guayaquil)では医療崩壊が起きており、最前線に立つ医療従事者は毎日恐怖に直面している。医療従事者らによると、グアヤキルのある病院には新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者が殺到。遺体安置所も満杯なため、職員らが遺体をトイレに積み重ねなければならない状況に置かれている。

 匿名を条件に取材に応じた男性看護師(35)によると、かつて看護師1人当たりの受け持ち患者数は15人だったが、3月に新型ウイルスの流行による公衆衛生上の緊急事態が発生すると、わずか24時間のうちに30人に急増したという。

 男性看護師は、「とても大勢が搬送されてきた……彼らは私たちのせいで死んだも同然だ」「患者たちは孤独で、悲嘆に暮れている。治療は消化管に大きなダメージを与え、大便を漏らす人もいる。彼らは具合が悪く、この先ずっとそれが続くのではないかと思っている。そして隣の患者が窒息しかけ、酸素が欲しいと声を上げるのを聞く」と語った。

 病院だけでなく、遺体安置所も飽和状態になっている。

 男性看護師は、「遺体安置所の職員はこれ以上遺体を受け入れてくれないので、私たちが遺体を包み、トイレに安置せざるを得ないことが何度もあった」と語った。遺体安置所の職員が引き取りに来るのは、6人か7人の遺体が積み重なった時だけだという。

 男性看護師の同僚の女性看護師(26)もこの混沌(こんとん)とした状況を認めた。女性看護師はAFPの取材に対し、トイレにも、床にも、アームチェアにもたくさんの遺体が安置されていると説明した。

 公式統計によると、エクアドルではこれまでに2万3000人近くが新型ウイルスに感染し、約600人が死亡しており、グアヤキルが最も被害の大きな都市となっている。

 しかし、実際の死者数は、これよりもはるかに多いと考えられている。グアヤキルが州都となっているグアヤス(Guayas)州では4月、上旬だけで同月平均の3倍超となる6700人の死亡が確認された。

 1日当たりの死者数は先週、減少に転じたが、今回の体験に苦しんでいるという男性看護師にとってはあまり慰めにはならなかった。

 24時間勤務を終え、痛む足で帰宅して眠ろうとしても、今度は「悪夢」にさいなまれる。夢の中では転ぶまで走り続け、「トイレのドアを開くとあのたくさんの遺体が……眠りに戻ることはできない」のだという。

 自宅での生活も変わった。厳格な隔離措置に従っているので、両親や兄弟と顔を合わせることはできない。

 男性看護師は帰宅すると、一連の儀式を行う。車と靴を消毒し、中庭でホースを使って水浴びし、お湯で衣服を洗う。

「食事はプラスチックのテーブルで、誰からも離れたところで取る。自室を出る時はマスクを着ける。誰も抱きしめることはできない。ペットさえも」と男性看護師は語った。(c)AFP/AFP reporters with Paola LOPEZ in Quito