【4月29日 AFP】ロシアの首都モスクワ近郊の高速道路計画に対して、反対運動が立ち上がっている。建設予定地に放射性廃棄物の処分場があるためだ。

 原子物理学者のアンドレイ・オゾロフスキー(Andrei Ozharovsky)氏は、セルフィー(自撮り写真)用の棒に取り付けたスマートフォンに搭載された線量計を使い、ガンマ線を追跡している。雪解け中の地面の浅いくぼみにそれをかざすと、ひび割れのような音が出て、読み取り数値が上昇する。そして最初は黄色だった表示が赤に変わる。

 線量計がガンマ線の高い値を示すスポットは、樹木に囲まれた丘の上に点在している。すぐ近くには通勤客で混雑する鉄道駅や集合住宅群がある。

 オゾロフスキー氏と地元住民にとって最大の懸念は、この丘の上に建設が予定されている片側4車線の高速道路だ。この傾斜地にはチェルノブイリ(Chernobyl)原発事故より前の、旧ソ連時代の放射性廃棄物が埋められているのだ。

 近くでは新道路の建設工事がすでに本格化している。過去1年間にわたりこの土地を調査しているオゾロフスキー氏は、「本当に恐ろしいのは、われわれが今まさに立っているこの場所に道路が計画されていることだ」と語る。

「表面の土を取り除けば、すぐに(放射線の)値が上昇する。つまりわれわれは放射性廃棄物の真上に立っているということだ」。線量計の数値は、1時間当たり1マイクロシーベルトを超えるまで上昇した。これは、その場所に1時間立っていると、1マイクロシーベルトの放射線にさらされるということを意味する。

 オゾロフスキー氏によると、この値は環境放射線量の3倍以上で、近くにいても危険はないが、地中の線量はさらに高いことを示唆している。それはちりとして拡散し、いつか人間の肺の中に入ることになる。

 ロシアの建設規則では1時間当たり0.6マイクロシーベルトを超える現場の場合、建設計画の決定前に、除染が可能かどうかを判断する追加調査を義務付けている。

 だが、この高速道路建設計画は多大な影響力を持つモスクワ市長、セルゲイ・ソビャニン(Sergei Sobyanin)氏が推進する道路建設4件のうちの一つであり、その計画書には「現場では放射能汚染は一切発見されていない」と書かれている。