【4月26日 AFP】米ナスダック(Nasdaq)に上場している中国のバイオ医薬品企業シノバック・バイオテック(Sinovac Biotech)は、開発中の新型コロナウイルス向けワクチンが、サルを対象とした動物実験で初めて「大きな予防効果」を発揮したと発表した。

 同社によるとアカゲザル8匹を対象にした実験で、開発中のワクチンを4匹には多めに、残る4匹には少なめに投与し、3週間後に新型コロナウイルスにさらしたが、8匹とも発症しなかった。

 ワクチンを多めに与えられた4匹では、ウイルスへの暴露から7日目に肺の中でウイルスが確認されたが、「検出できないほど」わずかな量だった。一方、ワクチンを少なめに与えられた4匹では体内でウイルス量の増加がみられたが、自然に制御されたとみられている。

 他方、ワクチンを全く与えなかった別の4匹は発症し、重い肺炎に見舞われた。

 同社は世界の研究者らによる査読を受けていない状態で19日、この結果を生命科学分野のプレプリントサーバー「バイオアーカイブ(bioRxiv)」で発表。その3日前には人間を対象とした臨床実験を開始している。

 開発中の別の新型コロナウイルス向けワクチンについて最近、米科学誌「セル(Cell)」のために共同調査した米マウントサイナイ・アイカーン医科大学(Icahn School of Medicine at Mount Sinai)所属のウイルス学者、フロリアン・クラマー(Florian Krammer)氏はシノバック・バイオテックのワクチンについて「現時点で候補として挙がっているワクチンの中で初めて重大な前臨床試験データを目にした」と述べた。

 クラマー氏はツイッター(Twitter)への投稿で、このワクチンで不活化ウイルスを用いる方法は「昔からある技術」で、量産体制を整えやすいと指摘している。

 新型コロナウイルスに関してはこれまでに数種類のウイルス株が確認されている。これはウイルスが徐々に変異していること、そのためワクチン開発がより困難なことを示唆している。

 だが、シノバック・バイオテックによると同社のワクチンの実験では、中国、イタリア、スイス、スペイン、英国の患者らから検出されたさまざまなウイルス株を「無毒化」することができたという。

 ただし、不活化ウイルスを使用したワクチンでは安定した効果を得るために追加接種が必要であり、またシノバックの開発ワクチンが「長期の予防効果」をもたらすものかどうかは現時点では不明だと、英ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(University College London)の免疫制御学の専門家、ルーシー・ウォーカー(Lucy Walker)教授は指摘している。

 同ワクチンの第3段階の臨床試験には、新型コロナウイルスの発症者および、これまでに感染したことのないボランティアが必要だという。

 これまでに世界で約280万人が感染し、20万人以上が死亡している新型コロナウイルスに対するワクチンは今のところまだ開発されていない。世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルスのワクチン開発には1年~1年半を要するとしている。(c)AFP