【4月24日 AFP】新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)が起きる中、ソーシャルメディアに投稿された米国のある研修医のダンス動画が、医療関係者を含む大勢の人にとってちょうど良い「薬」になっているようだ。

 ダンス動画を投稿しているのは、米オレゴン州ポートランド(Portland)にある大学病院の麻酔科研修医、ジェイソン・キャンベル(Jason Campbell)氏(31)。動画共有サービス「ティックトック(TikTok)」にちなみ、「ティックトックドクター」と呼ばれているキャンベル氏は、同僚と一緒に披露した「コロナ・フット・シェイク(corona foot shake)」といった数々のダンス動画を投稿し、インターネット上で大きな話題となっている。

 キャンベル氏は、ウイルスの影響が最も大きいニューヨークの医療従事者を含む、数多くの人から肯定的な反応が寄せられていることに驚いているとAFPの取材に語った。

「医療に関わっていると、つらく悲しい場面を目にすることが多い」

「人間らしさ、健全さを保つために、そしてただ笑顔でいられるために、われわれも何か必要だった。たとえ12時間勤務のうちのたった5分だとしても」

 キャンベル氏がこうした動画の投稿を始めたのは、特にアフリカ系の若者たちに向けたメッセージとして、夢を諦めないこと、そして医師になれる可能性が誰にでもあることを伝えたかったからだという。

 しかし、キャンベル氏のダンス動画は瞬く間にインターネット上で広がり、今の暗い世の中を明るくしてくれるものとして、多くの人の心に届いた。「コロナ・フット・シェイク」だけでも400万回以上再生された。

 キャンベル氏は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診療チームで働く、循環器内科医の妻を持つという人から動画を見てリフレッシュできたというメッセージをもらった」と話し、また、ある肺がん患者からは、隔離下での生活をやり過ごせるとして感謝のメッセージが届いたことを明らかにした。

 最も多い反応は「一日の終わりにこの動画を見るのが大好き」というもので、中には「家族が新型コロナに感染したけれど、回復するまでの間、皆で動画を見ている」というメッセージもあった。

 当初、キャンベル氏の同僚は動画で一緒に踊ることに消極的だったが、人々からのポジティブな反応を見てダンスに参加するようになったという。

 病院関係者もキャンベル氏のアイデアを称賛している。

 同院のチーフメディカルオフィサーであるレニー・エドワーズ(Renee Edwards)医師は、「キャンベル先生の持つ活力とカリスマ性は『伝染的』」「優れた医師で、日常業務の中にポジティブな力を取りいれるユニークな手法を見つけた。患者も同僚も同様に元気づけている」とコメントしている。

 キャンベル氏の動画はオレゴン州知事や、米人気歌手ジャネット・ジャクソン(Janet Jackson)さんからも高く評価されている。

 映像はキャンベル氏提供、10日撮影。(c)AFP/Jocelyne ZABLIT