■果たされなかった約束

 ナバホ・ネーションは1868年に結ばれた条約に基づいて設立され、その4年前に強制移住させられていたナバホの人々は父祖の地に帰還した。

 米ジョンズ・ホプキンス・センター・フォー・アメリカンインディアン・ヘルス(Johns Hopkins Center for American Indian Health)のアリソン・バーロー(Allison Barlow)氏によれば、ナバホの人々は他の米先住民と同様、連邦政府の出資で医療と教育が永続的に無償提供されることを条件に、先祖代々の広大な土地を手放したという。

 だが、この約束は十分に果たされたとは到底いえない。たとえば、7万平方キロに及ぶ居留地には、たった12か所しか医療施設が存在しない。

「インディアン保健局(IHS)の医療費支出は現在、一人当たり平均3333ドル(約36万円)だ。これに対し、(高齢者医療保険制度の)メディケア(Medicare)は一人当たり1万2744ドル(約137万円)、退役軍人向け医療保険制度は同9404ドル(約101万円)を支出している」とバーロー氏は説明する。

 米議会は、新型コロナ流行で影響を受けた米先住民の救済に相当額を確保し、近く80億ドル(約8600億円)が拠出される見通しだ。だが、バーロー氏は「世界で医療機器と医療従事者が不足していることに鑑みると、救済金を必要なことに当てられるかどうかが喫緊の課題だ」と述べた。(c)AFP/Issam AHMED