【4月23日 AFP】スペインの大手メディア企業であるメディアプロ(Mediapro)のハウメ・ローレス(Jaume Roures)最高経営責任者(CEO)は、新型コロナウイルスの影響で放送局のサッカーへの投資は縮小し、欧州のクラブが選手の獲得に数百万ユーロもの移籍金を費やす時代は終わるとの見解を示した。

 メディアプロは来季から、4年にわたるフランス・リーグ1とリーグ2の大半の国内向け放映権を獲得している。その契約金は年間11億5300万ユーロ(約1340億円)と史上最高額であり、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)による経済的危機をクラブが乗り越える上でカギを握る存在となるかもしれない。

 また、スペイン1部リーグの筆頭放送事業者としての契約は2年前に終了している中国資本の同社だが、スペインのパブやバーで同リーグの試合を放送する権利も持っている。

 英国でイングランド・プレミアリーグを放送するスカイ・スポーツ(Sky Sports)やBTスポーツ(BT Sport)、あるいはドイツのスカイ(Sky)といった局は、メディアプロが8月からフランスで開始される契約にどう対処するのか注目するだろう。

 ローレスCEOはAFPの単独取材に対し、フランスのクラブとの間ですでに結ばれた合意は「変わらない」と主張したが、今後各放送局が新たな契約にどれだけの金額を投じることができるかについては懐疑的な態度を示した。

 ローレスCEOは「一般的に、放映権に費やされる額はすでに最高額に達していた」とコメントした。「テレビ放映権がこの影響を受けるのは明らか」

 昨シーズン、世界で最も資金力のあるクラブの一つであるFCバルセロナ(FC Barcelona)は総収入の約35パーセントを、欧州王者リバプール(Liverpool FC)にいたっては約50パーセントを放映権で得ており、それが削減されることになれば各クラブは大きな打撃を受けるだろう。

 ローレスCEOは「サッカークラブが選手のために数百万ユーロを支払う時代は終わる」と続けた。「クラブは資金不足になる。銀行が以前ほど容易にクラブに融資しないだろうから」

「すべてが変わるはずだし、それはとてもポジティブなことだと思う。クラブが1人の選手に1億4000万ユーロ(約163億円)や1億6000万ユーロ(約187億円)を支払うことに一切同意できなかった。社会全体や特にクラブの財政にとって、非常に前向きなこと」

 また、例えばバルセロナがパリ・サンジェルマン(Paris Saint-GermainPSG)のネイマール(Neymar da Silva Santos Junior)を買い戻す見込みについて「今後は不可能」だと話した。「バルセロナはただ経済力がなくなる」

 フランスでは現在シーズンが中断していることから、beINスポーツ(beIN Sports)やカナル・プリュス(Canal Plus)は支払いを一時ストップするなど、すでに行き詰まりを見せている放送局があるのに対し、英国のスカイ・スポーツは解約されないようにするため、ユーザーに対して契約の凍結を認めている。

 契約者が高額なパッケージを維持、更新しないかもしれないという恐れはあるが、ロックダウン(都市封鎖)の措置が解除されれば、ファンはよりサッカーの世界に戻りたくなるとローレスCEOは確信している。

「この危機によって、人々がサッカー観戦から離れ続けるわけではない」

「無観客で試合を行う必要があるかもしれないし、いつまでになるかは分からないがバーやレストランも閉鎖されるかもしれない。だが、人々はできる限り早いサッカー観戦を必要としており、少なくともそれを望んでいる。現時点では何かを変える必要性は感じていない」 (c)AFP/Thomas ALLNUTT, Patxi VRIGNON-ETXEZAHARRETA