【4月22日 AFP】(画像追加)米ニューヨーク州で病院に搬送される新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の間にはある傾向がみられる──それは、発熱、せき、息切れといった症状にとどまらず、深刻な錯乱状態に陥る人が一定数存在していることだ。こうした患者らは、自らがいる場所や今年が何年なのかも分からなくなっていることを訴えているという。

 錯乱は、患者の血中酸素濃度の低下に関連しているケースもあるが、一部の患者では順調な肺機能にもかかわらず同様の状態がみられるため、その場合は血中酸素濃度が理由であることは考えにくい。

 こうした患者を診察している米ニューヨーク大学(NYU)ランゴーン・ブルックリン病院(Langone Brooklyn Hospital)の神経科医、ジェニファー・フロンテラ(Jennifer Frontera)氏はAFPの取材に応じ、これらの所見によって新型コロナウイルスが脳と神経系に及ぼす影響についての懸念が高まっていると語った。

 米国医師会雑誌(JAMA)では先週、中国人患者214人の36.4%が嗅覚喪失や神経痛から、けいれんや脳卒中までのさまざまな神経症状を示したことが明らかになったとする研究論文が発表された。

 また、米医学誌「ニューイングランド医学ジャーナル(New England Journal of Medicine)」に今週掲載された論文では、仏ストラスブールの患者58人を調査した結果、半数以上に錯乱や興奮などがみられ、脳画像検査で炎症が示唆されることが明らかになった。

 米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(University of California, San Francisco)神経学部の学部長を務めるアンドリュー・ジョセフソン(Andrew Josephson)氏は、AFPの取材に「これ(新型コロナウイルス感染症)は呼吸器疾患だと言われてきたが、最も気掛かりな部位である脳にも影響が及んでいる」と話し、「錯乱状態になる場合や、思考障害がある場合は、これらを理由に病院で診察を受ける必要がある」と指摘する。

「これまで言われ続けてきた『呼吸困難でなければ来るな』はもはや当てはまらないだろう」