■限界は?

 参加者がアプリをダウンロードして、各自の最新状況を更新していく接触追跡計画が結果を得るためには、一定人数の参加が必要だというハードルがある。

 オックスフォード大の研究者らとともにアプリを開発しているボランティアグループ「コービッド・ウオッチ(Covid Watch)」の共同創設者ティナ・ホワイト(Tina White)氏によると、携帯電話ユーザーの60%が追跡アプリを採用すれば、感染拡大の形勢を変えるのに役立つと一部の専門家は示唆している。

「大事なのはメッセージそのものと、それをどう伝えるかだ」とホワイト氏。「これは自分たちを守ってくれるものだと人々が理解すれば、使うようになるだろう」

 一方、技術的限界からくる別の潜在的な落とし穴を指摘する専門家もいる。

 英ケンブリッジ大学(University of Cambridge)の科学者ロス・アンダーソン(Ross Anderson)氏は、任意使用のアプリはどんなものでも「荒らされる」危険性があり、それによって無効化される恐れがあると警告する。例えば、スマートフォンを犬にくくりつけて公園を走らせたり、学校を休校にしたがっている生徒が仮病を報告したりといった不正使用だ。

■プライバシーの問題

 接触追跡はプライバシーを保護しながら実施できると研究者らは主張している。だが、それは各国で開発されるアプリによる。

 米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者らは、同大で開発した「セーフパス(Safe Paths)」というシステムでユーザーの特定や位置情報の追跡を阻止することで、一部の国が利用している大衆監視的要素を回避できるとしている。

 一方、ワシントンのプライバシー保護団体「フューチャー・オブ・プライバシー・フォーラム(Future of Privacy Forum)」のジョン・ベルディ(John Verdi)氏は、グーグルとアップルのシステムは「追跡と再特定化の使用事例を軽減するための、かなり強力な保護策」を備えているようだと語っている。(c)AFP/Rob Lever