【4月22日 AFP】国連総会(UN General Assembly)は20日、今後開発される新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のあらゆるワクチンに公平なアクセス権を求める決議案を採択した。しかし、全会一致と報じられたこの決議案に対し、米国が採決後に反対し阻止しようとしたが失敗したと複数の外交官が明らかにした。

 国連総会に出席した加盟国193か国はメキシコが主導した、将来的にCOVID-19ワクチンへの「公平かつ効率的、そして時宜にかなった」アクセス権を求める決議案を全会一致で採択した。

 同決議案に法的拘束力はないが、米国は別の点で難色を示した。決議案では、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が強く批判している世界保健機関(WHO)の「極めて重要な主導的役割」に焦点が当てられていたためだ。トランプ氏は、中国で新型コロナウイルスが初めて確認されて以降のWHOによる感染拡大抑止策が不十分だと批判している。

 決議文が発表されたのは採決から3時間後で、いつになく時間がかかった。この遅れについて複数の外交官はAFPに対し、米国が採決後に決議を阻止しようとしたからだと語った。

 国連(UN)の常任理事国5か国(米英仏ロ中)が拒否権発動によって決議を阻止できる安全保障理事会(Security Council)とは異なり、全加盟国が含まれる国連総会で拒否権の発動はできない。

 平常時の国連総会では全会一致か、投票による多数決によって決議の採択が行われている。投票結果は選挙の場合を除いて、電光掲示板に表示される。

 しかし現在、国連総会は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)の影響で、ニューヨークにある国連本部での会議開催を少なくとも5月下旬まで控えている。その間の暫定措置として、決議案の採決前に数日間の「沈黙期間」を置き、その間に加盟国が反対意見を表明できる機会、つまり実質的に決議案を拒否できる機会を与えている。

 外交官らによると、米国は今回の決議で20日に設定された締め切りの前には「沈黙を破らなかった」が、採決直後に反対を表明しようとした。

 この件について国連米国政府代表部に取材を試みたが、回答は得られていない。一方、新型ウイルス流行への対処をめぐり米国内で批判を浴びているトランプ氏は、WHOへの攻撃の手を強めている。(c)AFP/Philippe RATER