■「黄金時代」の裏で癒えぬ傷痕

 昨年12月、大ヒット映画『アナと雪の女王2(Frozen 2)』は、ディズニー映画としては初めて、北部サーミ語に吹き替えられた。

 映画の内容も、サーミ人の民俗性と生き方を色濃く反映している。エルサとアナの姉妹は魔法の森の中で、テント住まいの民族、ノーサルドラと出会う。彼らの衣装やトナカイを家畜としている生活様式は、明らかにサーミ人をモデルにしたものだ。

 一方でサウンドトラックは、サーミ人の伝統歌謡「ヨイク(yoik)」に焦点を当てている。歌詞を翻訳したバレさんは、北部サーミ語版のリリースはサーミ人の子どもたちにとって「別格」の瞬間だと説明する。

 サーミ議会(Sami Parliament)の議長、ティーナ・サニラ・アイキオ(Tiina Sanila-Aikio)氏は、サーミ語は「黄金時代」を迎えているものの、過去の傷痕は癒えないままだと指摘する。

 北欧各国の政府は、サーミ人の言語と文化を非文明的で悪魔的だと非難し、残忍で時には暴力的な体制を取り、子どもたちをマジョリティーの社会に同化させた。結果、今日のサーミ人の多くは、親の世代からサーミ語を学ぶ機会を奪われた。

 サニラ・アイキオ氏は、言語を取り戻すことは「盗まれたものを取り戻す」ことを意味すると語った。(c)AFP/Sam KINGSLEY