【4月23日 東方新報】新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けた自動車市場が、じわりと回復してきている。一つには政府や企業が、消費者への補填(ほてん)策を打ち出した効果が出始めたことがある。 

 上海汽車通用五菱(SGMW)は2月に10億元(約152億円)の補填策を打ち出し、続いて4月10日にも10億元キャッシュバックキャンペーンを打ち出した。これらは強力なカンフル剤になると、同企業の拠点でもある広西チワン族自治区(Guangxi Zhuang Autonomous Region)柳州市(Liuzhou)の上海汽車通用五菱のディーラーでもある柳州市双恒物資貿易の販売担当副経理は期待を寄せている。

 上海汽車通用五菱は、2月25日から3月31日に「通勤安全売り出し、五菱宝駿10億キャンペーン」を打ち出し、主力製品の宝駿を購入した個人に最高1万1000元(約16万7000円)のキャッシュバックを行っていた。 

 双恒物資貿易は、このキャンペーンのおかげで2月だけで129台、前年同期の5分の1にあたる台数を販売できたという。3月の売り上げも635台となり、前年同期の9割まで回復した。3月の五菱の末端小売り総台数が13万台、2月が1万1800台であったことを思えば急激な回復だ。4月に入って、感染状況の鎮静化が見えたこともあり、自動車展示場に足を運ぶ人も増えてきたという。 

 同様の措置を取っている自動車企業は少なくない。3月には北京現代(ヒュンダイ、Beijing Hyundai Auto)がフィエスタEV購入の場合、分割支払いの3年利息免除などの優遇策を打ち出した。広州汽車集団(Guangzhou Automobile Group)は政府補填をもとにして、車種によって8000元(約12万円)から3万6000元(約55万円)の補填を行っている。
 
 企業の自助努力であるキャッシュバックなどのほか、中国各地の地方政府が、独自に自動車購入刺激策を打ち出した。2月以降、広東省(Guangdong)仏山(Foshan)では1台の購入ごとに2000元(約3万円)から5000元(約8万円)を補填。ほかにも広州(Guangzhou)、珠海(Zhuhai)、湖南省(Hainan)長沙(Changsha)など10の都市で、自動車購入制限の緩和や、購入費補填政策を打ち出している。 

 中国自動車工業協会の統計では、3月の生産台数は前月比399.2%増の142万4000台、販売台数は同361.1%増の143万台と大幅に回復。4月はさらに、地方政府、企業の購入促進政策の結果が出てくると思われる。ただし、第1四半期全体でみると、生産台数は前年同期比45.2%減、販売台数は同42.4%減となっている。 

 自動車産業は中国経済の中心産業であり、自動車産業の安定的成長の意義は重要だ。2019年の自動車総生産値はおよそ8兆元(約121兆円)で国内総生産(GDP)の8%を占め、自動車及び関連産業の雇用数は全国雇用総数の約6分の1。新型肺炎の影響でサプライチェーンが寸断されたが、市場自体には開拓の余地は十分にある。(c)東方新報/AFPBB News