【4月20日 東方新報】中国では、新型コロナウイルス感染症の収束後の経済回復を狙って、地方で「消費券」を住民に配布し、文化イベントや旅行、飲食産業の消費を刺激しようとしている。この1か月で少なくとも全国17省の30以上の都市で消費券が発行され、東部では億単位で発行する太っ腹な都市もある。 

 江西省(Jiangxi)は総額1000万元(約1億5200万円)の観光電子消費券を4月1日から配布。初日発行の5000枚は申し込みが殺到した。江西省は額面50元(約760円)の消費券を累計20万枚発行する予定という。使用期限は今年6月末までで、申し込み資格は江西省居住者であること。全省の景勝区、観光地やリゾート地や劇場の入場料や遊覧船料金などに使用できる。

 南京(Nanjing)や杭州(Hangzhou)などの東部都市では、1億元(約15億円)分の消費券を配布するところもある。 

 中信証券(CITIC Securities)の研究リポートでは、こうした消費券政策は、地方政府の財政状況から規模としては限界があるが、消費刺激の補助手段にはなるという。全国で発行される消費券規模を349億元(約5300億円)と仮定すると、1.8倍の629億元(約9600億円)の消費を掘り起こすと推計。個人消費の指標となる「社会消費品小売総額」全体と比較すると微々たるものだが、現地企業と地元居民の困難を緩和する重要な意義があるという。 

 ただし、京東数字科技集団(JDD)のチーフエコノミスト沈建光(Shen Jianguang)氏が南方日報(Nanfang Daily)の取材に答えたところによると、消費券は副作用も注意しなければならない。サプライサイドの状況を顧みずに消費券をばらまいても、理論上インフレを引き起こすリスクがある。実施の細かい設定を考慮しなければ、本当に消費に用いられるかどうかわからないとしている。

 例えば、1999年の日本の地域振興券は、印刷デザインに凝りすぎたため、コレクターが争奪し、消費にまわらなかったという。また、全面的に何でも利用できる消費券は現実的ではない。特定の地域、産業、消費者層にターゲットを絞るべきだという。 

 中国の2019年の社会消費品小売総額は41兆2000億元(約626兆円)。前年比8%増で、経済成長への貢献率は57.8%。6年連続で1位の経済けん引力だ。消費の復活こそ新型ウイルスのまん延で傷んだ経済回復のカギだけに、消費券政策はさらに各地方で拡大していきそうだ。(c)東方新報/AFPBB News