【4月25日 AFP】仏パリの老舗キャバレー「ムーランルージュ(Moulin Rouge)」のダンサーは、熱狂する大勢の観客の前で華やかな踊りを披露してきた。だが、全国が封鎖下にある今、鏡やペットの猫の前で踊ることしかできない。一人きりで。

「30平方メートルの広さ(のアパート)での練習は、少しやりづらいです」と語るのは、豪出身のコートニー・メール(Courtney Male)さん(23)。「午後、バーレッスンをしたり、全身を動かしたりしています」。ムーランルージュのリハーサル室やジムに行けない状態で、健康を維持するためだという。「練習がそれほどきつくなかった日には、その後、散歩やジョギングに行きます。その日の練習内容次第です」

 封鎖措置が解除され、ムーランルージュや他のパリの娯楽施設が営業を再開する時に向けて、ダンサーらは準備を続ける。体力を必要とするフレンチカンカンをいつでも披露できるよう、体を整えておかなければならないのだ。

 多くのダンサーは、パリの小さなアパートで暮らしている。

 マチルド・テュティオ(Mathilde Tutiaux)さん(32)は、キッチンのカウンターの上で体を伸ばす。

 ムーランルージュで8年踊っているテュティオさんはAFPに、「小さなリビングにオープンキッチンがあるのでラッキーです」と語った。「そこにジムマットを出せば、ちょっとしたスペースを確保できますから。でも、踊るには十分ではありません……」

 テュティオさんはほぼ毎日、午後5時に仲間と集まり一緒に練習する──もちろん、オンラインで。今行っているのは、ジャンプやスピン、リフト(他のダンサーに持ち上げてもらう動き)を除いたメニューだという。

 ムーランルージュ全体の従業員は450人。そのうち90人がダンサーだ。3月17日からの全国的な封鎖措置を受け、従業員らは半失業状態にある。(c)AFP