【4月15日 AFP】フランス・パリのノートルダム大聖堂(Notre Dame Cathedral)に壊滅的被害を与えた昨年4月の火災から、15日で1年を迎えた。再建工事は新型コロナウイルスの影響で中断しており、すっかり静かになった大聖堂の上では、動きを止めたクレーンが大きく穴の開いた屋根の傍らで放置されたままとなっている。

 13世紀に建造され、国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の世界遺産(World Heritage)にも登録されているノートルダム大聖堂は昨年4月15日、大火災に見舞われ、世界中の人々が徹夜の消火作業を見守る中、屋根と尖塔(せんとう)が焼け落ちた。

 2024年に予定されているパリ五輪に間に合わせるため、エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)仏大統領は5年以内の再建を約束しているが、屋根と尖塔から溶け落ちた鉛は300トンを超え、また現場は有害な微粒子に覆われており、除去作業によって工事はすでに大幅に遅れている。

 さらに現在、フランスでは新型コロナ対策のロックダウン(都市封鎖)が実施されており、工事は全面的に停止。以前にも増して目標達成が困難な状況となっている。

 それでも祭壇手前の身廊のがれきはほとんど除去されており、先週にはミシェル・オプティ(Michel Aupetit)パリ大司教が小規模な聖金曜日(Good Friday)の式典を執り行った。

 しかし、屋根の上には今もがれきが山積しており、8000本近いパイプを覆った鉛の粉じんを丁寧に除去するため、有名なパイプオルガンも取り外さなければならない状況だ。

 この他にも無数の清掃・修復作業を控える中、作業が進むにつれて新たな困難が持ち上がる可能性もあると再建事業の主任建築家であるフィリップ・ビルヌーブ(Philippe Villeneuve)氏は懸念している。

 ただ、再建事業の責任者を務めるジャンルイ・ジョルグラン(Jean-Louis Georgelin)元統合参謀総長は、新型コロナによる工事の遅れにもかかわらず、今でも5年での再建に自信を示しており、2024年4月には大聖堂で賛美歌が聞けるようになると述べている。

 ジョルグラン氏は「5年で完了させるためにわれわれが手抜きをすると言う人が多いが、それは悪意のある見解だ。問題はちゅうちょせず、粘り強く作業を進めるかどうかにかかっている」と強調した。

■困難な選択

 しかし依然、当局には重大な決断が残されている。伝統的な工法と資材で大聖堂を元通りの姿に復元するか、それとも現代的な設備や技術を取り入れるのか──。

 19世紀半ばに建築家ウジェーヌ・ビオレルデュク(Eugene Viollet-Le-Duc)が建造し、もともと近代的な雰囲気を持っていた尖塔について、マクロン大統領は「現代風な」雰囲気を加えることに賛意を示している。

 ただ、ビルヌーブ氏はガラスの尖塔や屋上庭園といった案には否定的な見方を示しており、世論調査でも多くのフランス人が同様の考えを持っていることが分かっている。

 新型コロナウイルスの影響により、現在フランスでは集会が禁止されている。火災から1年に関する式典などは一切予定されていない。

 映像は14日撮影。(c)AFP/Jean-Louis DE LA VAISSIERE and Joseph SCHMID