【4月29日 AFP】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界的に流行する中、南米チリ中部では水不足によって感染のリスクにさらされている人々がいる。

 新型ウイルスから身を守るために提唱されていることの一つに、手洗い習慣の大切さがある。だが、チリ中部では昔から川の水位が低く、さらに干ばつで貯水池の水が枯渇している。その背景には、何年にもわたる資源開発と緩い規制がある。

 水を守る運動を行っている環境団体で広報を務めるロドリゴ・ムンダカ(Rodrigo Mundaca)さんは、「現在、ここには40万世帯、150万人近くが暮らしている。そして一人当たりの1日の水の使用量、50リットルの供給を貯水池に依存している」と語った。

「水なしの生活はひどいものです」。海辺のリゾート地バルパライソ(Valparaiso)近郊にある人口2万2000人の町、エルメロン(El Melon)に子どもと暮らす女性、ディルマ・カスティージョ(Dilma Castillo)さんは言う。「最悪なのは、地元の人たちさえも気付いていないということです。こうした状態はみじめで、本当に悩ましい」

 サンティアゴ首都圏とバルパライソの昨年の降雨量は、過去最低をさらに80%近く下回った。さらにチリ北部のコキンボ(Coquimbo)では、90%も下回った。

 チリでは多くの多国籍企業が銅の採掘を行っているが、実に最近まで、水が豊富にあったころには、民間企業による資源開発は問題ではなかったという。

 しかし、干ばつによって水が不足すると、地域社会から猛反発が起きた。昨年10月に起きた暴動は、新型ウイルス流行対策のソーシャル・ディスタンシング(対人距離の確保)によって下火になるまで続いた。

 このときエルメロンの住民約100人は、英米系の鉱山会社が管理する井戸を占拠した。活動家の一人、ファビアン・ビジャロエル(Fabian Villarroel)さん(26)によると、井戸を採掘活動ではなく、住民のための水の供給に用いるよう企業に要求している。

 この企業はAFPに対し、地元住民の幸福のために尽力しており、「地域住民が持続的に飲料水へアクセスできるようにする解決策」を共に模索していると述べた。

 チリの法律では、水は公共資源であると定められているが、実際には水利権はほぼ完全に民間部門へ引き渡されている。それでも、水利権を管理しているのは国であり、貯水池に蓄える水の量を決めることができるはずだと、水を守る運動団体の代表オスカル・クリスティ(Oscar Cristi)氏は主張する。

 なのに国はその権限を行使したことがない。おまけに行使に出れば、影響を受ける民間企業への補償が必要となるだろう。

 国連(UN)ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(Economic Commission for Latin America and the Caribbean)のアンドレイ・ジュラブレフ(Andrei Jouravlev)委員は「問題はそうした権利がどのように割り当てられ、どんな条件が課されるかだ」と指摘した。(c)AFP/Giovanna Fleitas