若者がアイドルに憧れるように、若いカー・デザイナーにも憧れの人がいる。今回は、山下氏が若かりし日のアイドル・デザイナーたちの思い出を綴る。

デザイナー、グラント・ラーソンがまとめた935フラットノーズの現代版。スケッチの段階だが私も参加する機会を得た。フラットノーズ化によりヘッドライトをエアインテーク内に移動させるアイデアが採用された。前後の大きな黒いフィンも採用されたアイデアの一つ。

第8回「カー・デザイナー業界のアイドルたち」

この歳になると、学生時代のことをよく思い返したりするようになる。特に高校時代はアイドル全盛期で、 御多分に漏れずアイドルに心酔していた時期があった。デビューしたての松田聖子、大場久美子、特にピン クレディーはもう私的にど真ん中で自分の部屋中にポスターを貼りまくり(はずかしい)、勢い余って学校 の教室の時間割の隣にまでポスターを貼ったこともある。

コンサートにも何度か足を運んだ。声援し過ぎて声を嗄らしてしまったほどだ。親父が仕事の関係上、何故かピンクレディー・グッズをしょっちゅう家に持って帰って来てくれたので(何の仕事だ?)、私の部屋の中は大きな店舗用ポスターは勿論、ピンクレディー下敷き、ピンクレディーうちわ、あげくの果てにピンクレディーごみ箱まであり、部屋中ピンクレディー一色であった。因みに私はケイちゃん派であった(はずかしい……)。

アイドルといえばカー・デザイナー業界にもアイドル、憧れの人は存在する。アートセンター時代、絵の上手いプロや、かっこいいショー・カーを手がけたデザイナーはみんなの羨望の的だった。あの頃の私たちのバイブルといえば『カー・スタイリング』で、三栄書房から出ていたその雑誌には、世界中の自動車会社のクルマに関する開発秘話や様々なプロジェクトが豊富なスケッチや写真と一緒に網羅され、新しい号が出るたびに学生の仲間たちと雑誌の取り合いとなり、ああだこうだと語り合ったものだ。

インターネットもない時代、この雑誌だけが貴重な情報収集源だった。掲載されているスケッチは学生にとって最高のサンプルであり、カッコいいスケッチが載っていると、一体どうやって描いたのか、いろいろ研究したものである。

そんな中で特に私の目を釘づけにしたのは、例えばGMのトム・ピータース、フォードのエド・ゴールデンといったデザイナーによる、見ただけでその人の手によるものと判る特徴的でフラッシーな(派手でいい意味でケバケバしい)スケッチだった。やはりアメリカにいると好みもアメリカナイズされるのか地味なものより派手で目立つスケッチを好むようになる。

彼らの描くスケッチはリフレクションを強調した、それはそれは派手なスケッチで兎に角目立つ。学生の中にも派手スケッチを描く者がいて、中でもニック・ピュー、 ジェイソン・ヒルは評判の出来る生徒だった。ニックはディスレクシア(難読症)で、自分の名前のスペル、Nick PughをNigl Puhgと書いたりし てしまう。彼に憧れるあまり、学生の中にはわざと自分の名前のスペルを間違えるオタクもいたほどだ。