ポルシェの拠点のひとつ、ヴァイザッハ研究所の中にあるスタイル・ポルシェ。今ではモダンな建築に生まれ変わった、そのワーク・スペースを案内する。

上海で発表になった新型マカン。リア・ライトもとうとう横一文字のポルシェ・アイデンティティとなる。ランプのセクションもより3D化されモダンに。リア・ゲートも実はサイド・ビューから 見ると新しい断面となり、よりスポーティーさを強調している。

第5回「私の仕事場、スタイル・ポルシェ。」

現在、ポルシェはドイツ国内に大きく分けて3つの拠点を持っている。ツッフェンハウゼン本社、ライプツィヒ工場、そしてヴァイザッハ研究所である。本社のあるシュトゥットガルト近郊のツッフェンハウゼンにはポルシェ・ミュージアムもあるので、ご存知の方も多いであろう。その周りに本社社屋と、911やボクスターの組み立て及び塗装工場があり、あの有名な生産途中のポルシェが道路上を渡る橋もある。

一方、ライプツィヒ工場は2002年にカイエンの組み立て工場として産声を上げた。そして、今ではスポーツカー以外の全てのポルシェを生産するほどの規模となっている。

さて、最後のヴァイザッハ研究所であるが、シュトゥットガルトから西に約30kmのところにあり、1972年にオペレーションを開始した。ここにはポルシェの全ての開発機関が揃っており、加えてテスト・トラック、風洞といった設備も備えられている。ポルシェの全てのレースカーもここで開発生産される。

私が初めてヴァイザッハを訪れたのは1992年のことであった。まだアートセンター・スイス校の学生であった私は、当時ポルシェにデザイナーとして勤務していた友人の家に遊びに行った際、仕事場を見せてあげようと言われて、彼の944に乗ってヴァイザッハへと向かった。

今もぼんやり覚えているのは、研究所の周りは畑ばかりで、受付と呼ぶには覚束ない小屋があったこと。そして、そこにいた口髭を生やした人懐っこそうなオッサンが、友人と二言三言交わして私に入館証を渡してくれたことだ。縦5cm、横7cmくらいの布製のポルシェ・ワッペンが刺繍された今では見ることの出来ない入館証であった。裏についた紙を剥がして胸にペタッと貼り付けると、デザイン部まで友人についていった。ミーティング・ルームに通され、そこで待っていると、なんとデザイナー達が4、5人やって来て私のポートフォリオを見てくれたのである。

ポートフォリオというのは、いわば就職のための作品集で、自動車デザイナーになりたい人達は必ず用意する。私も友人にアドバイスをもらおうと一応持ち歩いていた。そして、その場で彼らに簡単なプレゼンテーションをした。何を喋ったかはほとんど覚えていない。しかし、デザイナーの一人にインテリア・デザインは出来るかと聞かれたことだけは覚えている。残念ながらその時のプレ ゼンは実を結ばず、その時点ではまさかやがてここに戻ってくることになるとは思いもしなかった。