【4月12日 AFP】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)朝鮮労働党委員長の妹、金与正(キム・ヨジョン、Kim Yo-Jong)党第1副部長が、党の政策決定機関に復帰した。国営朝鮮中央通信(KCNA)が12日、報じた。

 KCNAによると、長年正恩氏の最側近の地位にあった与正氏は11日、党幹部人事で党中央委員会政治局候補に復帰。正恩氏は今回の決定を下した政治局会議を主宰していた。

 与正氏は昨年、正恩氏とドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領がベトナムの首都ハノイで行った2度目の首脳会談が物別れに終わった後、政治局員候補から解任されたとみられていた。

 脱北して韓国の首都ソウルで研究者として活動する安燦一(アン・チャンイル、An Chan-Il)氏はAFPに対し、「今回の復帰は、北朝鮮内の序列において、金与正氏が最近地位が上昇したことの一環だ」と述べた。

 さらにKCNAは同じく12日、今回の政治局会議で、急速に拡大する新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)に対し、より強力な措置を取るよう当局が求めたと報じた。ただ同国で感染者が報告されたかについては伝えていない。

 北朝鮮の政府当局とKCNAは、同国での感染者が一人もいないと繰り返し主張。しかしKCNAは同日の報道で、この主張には触れず、新型コロナウイルスの流行が「国境や大陸に関係なく、すべての人類を脅かす大惨事」と化したと伝えた。

 KCNAによると、11日の党中央委員会政治局会議では、ウイルスのパンデミックを受けた政策課題の変更に関して議論が行われた。当局は、ウイルスの同国への侵入に対して厳格で徹底した検査を行うよう求めた。

 専門家らは、北朝鮮の医療制度が貧弱で、とりわけ新型ウイルスに対して脆弱(ぜいじゃく)だと指摘。また脱北者らは、北朝鮮政府が感染の拡大を隠蔽(いんぺい)していると非難している。

 世界保健機関(WHO)によると、同国では4月2日時点で外国人11人と自国民698人の計709人に新型コロナウイルス検査が実施された。また、2万4800人超が隔離を解除されたという。(c)AFP