【4月11日 AFP】イタリアの犯罪組織が影響力を拡大すべく、貧困層に食料を配り、さらに貧困層へ無利子で融資するよう貸金業者に命じていると、反マフィアの著作で知られるイタリア人作家、ロベルト・サビアーノ(Roberto Saviano)氏が警鐘を鳴らしている。

 新型コロナウイルスの感染拡大で多くの死者が出て危機的状況にあるイタリアは、疲弊した経済を上向かせるため、欧州連合(EU)による金融支援を待っている。そうした中でイタリアのマフィアグループは、経営に苦しむ事業者を乗っ取るために手ぐすね引いて待ち構えているとサビアーノ氏は指摘。

「EUが直ちに介入しなければ、すでにドイツ、フランス、スペイン、オランダ、ベルギーにあるマフィアの資金は際限なく増えていくだろう」とサビアーノ氏は9日、記者らに話した。

 サビアーノ氏は、イタリア4大マフィアの一つで南部ナポリ(Naples)を拠点とする犯罪組織「カモッラ(Camorra)」の実態を描いたノンフィクション作品『死都ゴモラ(Gomorra)』で最もよく知られ、マフィアが麻薬取引やその他の違法行為以外に活動を広げ、世界中の合法的な事業者やさまざまな分野にうまく入り込むやり口について精通している。

 最も簡単な手口として、マフィアは今、イタリアの最貧困層に食料品を提供している、とサビアーノ氏は説明。さらにナポリでは、カモッラの命令で貸金業者が貧困層に借金の利子を取り消しているという。

「何のために? 好意を求めてだ」とサビアーノ氏。それは選挙の票になり得るし、マフィアの隠れみのとして名義を貸すのを認めるかもしれない、と同氏は続けた。

 現在、米ニューヨーク在住のサビアーノ氏は、『死都ゴモラ』の出版後に殺害予告を受け、警察の保護下に置かれている。(c)AFP/Alexandria SAGE