【4月11日 AFP】米国が入国制限を発動し、新型コロナウイルスを閉め出せたかのように思われていた2月下旬、呼吸器系に軽度の症状が出ていたイリノイ州シカゴ在住の男性が、知人の葬儀に参列した。

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 男性はその3日後、今度は誕生日パーティーに参加し、親族と共に祝った。

 米疾病対策センター(CDC)によると、この男性は自身が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を発症しているとは知らずに感染の連鎖を引き起こし、結果15人が感染、うち3人が死亡したという。

 イリノイ州が都市封鎖を施行したのは、これらの集まりがあった数週間後の先月21日だった。他の自治体も同時期に封鎖に踏み切った。

 CDCはこの「スーパースプレッダー」の案件を、ソーシャル・ディスタンシング(対人距離の確保)の勧告や外出制限令に従うことがいかに重要かを物語る例とみなし、今回の感染拡大がどのように起こったのか、その詳細を報告している。

■葬儀

 全ては、この報告書で「最初の感染者」と呼ばれる男性がある夜、友人2人とテークアウトした食品を、一つの皿から分け合って食べたことから始まった。これが葬儀の前夜で、この食事は約3時間続いた。

 翌日の葬儀は約2時間続き、そこでは参列者が持ち寄った料理を皆で食べた。男性はこの日、前夜に共に食事をとった2人を含む4人と、哀悼の意を込めて抱擁を交わしたとされる。

 4人のうち3人は、2〜6日後にCOVID-19の症状を呈した。1人は1か月近く入院した後、死亡。2人は外来患者として病院には行ったものの、自宅療養で回復した。

■誕生日パーティー

 葬儀の3日後、「最初の感染者」は親族9人と共に誕生日パーティーに参加。3時間続いた会合で、9人全員と濃厚接触があった。

 このうち7人が、パーティーの3〜7日後にCOVID-19の症状を示した。うち2人は入院して人工呼吸器を必要とする状況に陥り、死亡した。

 パーティー参加者のうち3人は、初期症状が出始めて6日後に教会を訪れた。この礼拝で、親族以外の医療従事者1人が感染したとみられている。この医療従事者は3人の近くに座り、1時間半にわたり会話を交わしたという。

 CDCは、この事例の感染者らの年齢は5〜86歳だと明かしている。

 新型ウイルスがどのように伝染するのかは、専門家らも依然解明できていないが、この事例は同ウイルスの感染力がいかに強いかを明示している。

 これまでは、くしゃみやせきによる飛沫(ひまつ)感染や、汚染された表面への接触感染が主因とされてきたが、研究が進むにつれ、感染者が呼吸したり話したりするだけでも伝染する可能性が示唆されている。

 その上現在では、非常に大きな割合の感染者が無症状で、その率は25〜50%に上るともみられている。CDCは勧告内容を更新し、外出時には全員顔を覆うべきだと呼び掛けている。(c)AFP/Ivan Couronne