【4月9日 AFP】台湾は9日、世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイェスス(Tedros Adhanom Ghebreyesus)事務局長が、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)への対応をめぐり、自身に対する個人攻撃とWHOに対する批判を台湾政府が主導していると非難したことを受けて、テドロス氏に謝罪を要求した。

 テドロス事務局長はスイス・ジュネーブでの記者会見で、自身とWHOに対してインターネット上で広がっている批判や侮辱に触れ、「この攻撃は3か月前、台湾から来た」と指摘。

「台湾、そして外務省も、(批判的な)動きを把握している。(台湾側は)そこから距離を置くことなく、あらゆる誹謗(ひぼう)中傷のさなかに私を批判し始めたが、私は気にしなかった」とテドロス氏は語った。

 同氏のこの発言は台湾で怒りを呼び、台湾側は「事実無根」と反論。外交部(外務省)はこの「中傷」への謝罪を要求した。

 蔡英文(Tsai Ing-wen)総統はフェイスブック(Facebook)上で、テドロス事務局長に台湾訪問を促し、台湾のウイルス対策から学んでほしいと伝えるとともに、「中国からの圧力に抵抗する」よう求めた。

 さらに「われわれは長年、国際機関から排除されてきており、差別を受け孤立させられる気持ちがどんなものか、誰よりもよく分かっている」と記した。

 台湾は、パンデミックが始まった中国と、地理的にも貿易面でも近接しているが、新型ウイルスによる死者は5人、確認された感染患者は380人にとどまっている。

 公衆衛生の専門家らは、台湾の新型ウイルス感染対策を評価しているにもかかわらず、WHOと台湾の関係は、パンデミックが始まって以降目立って悪化している。

 台湾はWHOの年次総会で、以前はオブザーバーの立場が認められていたが、近年は中国政府からの外交圧力があり、台湾はWHOを含む主要な国際機関から閉め出されている。(c)AFP