【4月12日 People’s Daily】派手な毛糸の帽子に、対照的な無地のトレーナー。サイズも少し大きめのよう。「ちぐはぐな服装に見えるでしょうけど、私が身につけている物は、すべて心ある方々からいただいたものです」。中国・湖北省(Hubei)武漢市(Wuhan)で食事の配送ボランティアを続ける劉仙(Liu Xian)さんは屈託のない笑みを浮かべる。市内の病院で奮闘を続ける医療スタッフのため、心と体に栄養をつける食事を送り届けている。

 劉さんは大学卒業後、四川省(Sichuan)成都市(Chengdu)で会社や団体などに仕出し弁当を届けるビジネスを起業。全国で100店舗以上を展開している。新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっていた2月初め、ボランティアを志願した劉さんは武漢市内の病院に食事を届けることになった。成都市から車を飛ばして10時間で武漢市内の店舗に到着し、2月4日に最初の弁当を病院へ配送した。

「当時、病院の食堂は患者の食事を作るのに手いっぱいで、医者の皆さんは毎日カップ麺を食べていたんです。この正念場で、私ができることはとにかく皆さんに温かい食事を届けることだけでした」

 劉さんは栄養バランスを考えて、「ご飯に肉のおかず二品、野菜のおかず一品」というメニューを守り続けた。劉さんがリードしている5人のチームは毎日200キロ以上の肉を仕入れ、500~600人分の弁当を届けた。寒さや天候を気にしないよう、彼女はいつもレインコートをまとってほかほかの弁当を届けていた。いつしか各病院のスタッフは親しみを込めて「レインコート姉さん」と呼ぶように。劉さんは医師らの胃袋を満たすとともに、その心も温かくさせていた。

 40日間休みなく活動を続け、届けた弁当は2万食を超えた。さらに、劉さんの活動を知った人々が全国からボランティアとして彼女のもとに集まり、「レインコート隊」が誕生。弁当以外に医療支援物資、生活物資も運ぶようになり、届けた物資は350万元(約5300万円)相当に達した。地元では「レインコート隊に一声かければ、すぐ100人が集まる」と言われ、「小さなレインコートが大きな傘になった」とたたえられている。劉さんは今後もボランティアを続けるため、「公益法人レインコート」という団体の設立も準備している。

 武漢市の感染が収束傾向を迎え、成都市に戻った劉さんは感染の有無を確認するため隔離生活を送っている。それでも、彼女がただ休むことはない。通信アプリ微信(ウィーチャット、WeChat)を通じて湖北省の特産品の購入を呼びかけている。「武漢市は何と言ってもアツアツの熱乾麺、潜江市(Qianjiang)なら新鮮なザリガニ…。白衣の天使たちは湖北省の市民のため命をかけました。私たちは特産品をまとめ買いして、湖北省の市民を支援できます。みんなの力で湖北省の日常を取り戻しましょう」 (c)People's Daily/AFPBB News