【4月9日 AFP】新型コロナウイルスの感染拡大防止のため全国的なロックダウン(都市封鎖)に入ったインドで、動物たちが人々が消えた隙に乗じて街を占拠している。中でも数百匹のサルが大統領府周辺の道路を占拠した事例は、その筆頭に挙げられる。

 インドの人口は13億人、自動車保有台数は数千万台にも上るだけに、それらの不在はひときわ目を引く。野良や野生の動物たちはその空白を埋める一方、新型ウイルスのパンデミック(世界的な大流行)の余波に苦しんでいる。

 商都ムンバイでは、クジャクが駐車中の車の上に止まり、華やかな飾り羽を広げていた。

 デリー(Delhi)では、 アカゲザルの群れが大統領府「ラシュトラパティ・バワン(Rashtrapati Bhawan)」の壁の上や衛兵の前を走り回ったり、官公庁などの敷地に入り込んだりした。

 大統領府の門に立つ衛兵は、「やつらはたくさんの物を盗むけど、まだ人を威嚇することはない」と説明した。

 アカゲザルはよく買い物客が手にする袋から食べ物をひったくっており、かねて問題視されてきたが、ロックダウンが始まってからはオフィスビルへの侵入例も複数報告されている。

 新型ウイルス対策として食料や生活必需品の買い物などを除いて人間の外出が制限されたことで、アカゲザル以外の動物たちものさばっている。

 報道によると、北東部シッキム(Sikkim)州の州都ガントク(Gangtok)では先週、ヒマラヤツキノワグマが通信会社のオフィスに侵入し、技術者1人が負傷した。

 一方、インド森林局(Indian Forest Service)は、店舗にシャッターが下り、閑散とした通りをゆっくりと進むゾウの映像をソーシャルメディアで共有した。

 しかし、一部の動物にとってロックダウンは、命に関わるものとなっている。

 動物愛護活動家らによると、コルカタの観光名所ビクトリア記念堂(Victoria Memorial Hall)付近で、普段は観光客向けの馬車を引いていた馬4頭が最近、餓死した。

 動物愛護団体「ラブ・アンド・ケア・フォー・アニマルズ(Love N Care For Animals)」の広報を務めるスシュミタ・ロイ(Sushmita Roy)氏によると、花や風船で飾られた馬車を引いていた馬115頭前後が、ロックダウン発令後に遺棄された。

 ロイ氏は、「馬たちは弱りつつある。餌を得られなければ数日以内にさらに多くが死ぬのではないかと懸念している」と語った。

 馬車の所有者らは、ロックダウンのせいで馬を養う金がないと主張。その一人は、「家族を食べさせるのさえ難しいのに、どうして馬に餌をやれるのか?」と訴えた。

 野良牛や野良犬の群れも、新たな自由を見いだして交差点を占拠したり、ごみ箱をあさったりしていた。しかし、飲食店などが休業となり、こうしたごみさえも消えた。

 デリー郊外に位置するノイダ(Noida)で動物保護施設「ポシュ・ファウンデーション(Posh Foundation)」を営むアディティ・バダム(Aditi Badam)氏によると、同業者はロックダウン中、保護動物や野良動物への餌やりに苦労しているという。

 バダム氏によると、捨て犬などに関する問い合わせが急増しており、「大きな問題」になっているという。(c)AFP