【4月14日 AFP】太永浩(テ・ヨンホ、Thae Yong Ho)氏はかつて数十年間、北朝鮮に仕えて駐英公使にまで上り詰めたが、2016年に亡命した。今は韓国に暮らし、15日に投開票が行われる総選挙に立候補している。当選すれば太氏は史上初めて、直接選挙で韓国の国会議員に選ばれた脱北者となる。

 太氏は首都ソウルの江南(Gangnam)の選挙区から出馬。江南は韓国のラッパー、サイ(Psy)さんの曲で有名になった富裕地区だ。

 太氏は革命に寄与したとされる良家の出身だが、金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-un)政権に幻滅し、2016年8月に駐英公使という立場を捨てて亡命した。

 同氏は脱北の理由について、北朝鮮と欧州の両方で生活したことのあるわが子らに、北朝鮮で「惨めな」人生を送らせないためだと明かした。「外の世界に一度出てしまえば、あのような隷属には耐えられない」

 過去20年間に、約3万3000人が脱北して韓国に逃れているが、政府高官が韓国に亡命するのはまれだ。

 北朝鮮の国営メディアは太氏を「人間のくず」と呼び、国費を着服して未成年者をレイプした、金銭目当てに韓国のスパイをしていたなどと非難してきた。

 暗殺の第一の標的とも考えられている太氏だが、「突破口を開いたり、変革を起こしたりするには、誰でも危険を冒さなければならない」と話している。

 韓国の大統領は直接選挙で選出されるため、15日に予定されている議会選は文在寅(ムン・ジェイン、Moon Jae-in)大統領の地位には影響がないとはいえ、今回の総選挙は事実上、文政権への評価を示す住民投票になる。

 脱北後の太氏は、北朝鮮や文氏の南北融和政策を公然と批判することで知られるようになった。

 太氏は保守系最大野党、未来統合党(UFP)に入り、同党の主要な支持基盤の一つとなっている江南の選挙区の候補に選ばれた。

 太氏は自身が議席を獲得した場合、過去に自らも一員だった北の上層部に対し、金正恩政権を排除できれば北朝鮮にも別の道筋が開き得るのだという、紛れもないメッセージを送ることになると信じている。

 太氏は「北の未来には新たな道があると伝えたい」と述べた。(c)AFP/Sunghee Hwang