【4月8日 AFP】米イリノイ州シカゴ在住のシェリー・ハワード(Shelley Howard)さん(73)は、普段なら週に6日は市内の有名なラッシュ・ストリート(Rush Street)近辺のレストランやバーで食事をするか、友人たちと一杯飲んで夜を過ごす。社交的なハワードさんは、そうした場で撮った写真をしょっちゅうネットに投稿してきた。その多くが、誰かとハグをしたり握手をしていたりする写真だ。

 だがこの3週間、友人には一人も会っていない。世界中の数百万もの人々と同じく、新型コロナウイルスの感染を避けるため、家に閉じこもっているのだ。

 一人暮らしのため、人との接触がほぼ断たれているハワードさんは、置かれた状況を「はっきりと認識している」と述べ、自身のSNSページに先週、米歌手ブルース・スプリングスティーン(Bruce Springsteen)の楽曲「ヒューマン・タッチ(Human Touch)」のビデオを載せたばかりと話す。

 そして、「私はしょっちゅう誰かとハグしていて、人にも好かれている。でも、今は仕方ない」と続けた。

 こうした状況について米フロリダ州のマイアミ大学ミラー医学部(University Of Miami Miller School Of Medicine)のタッチ・リサーチ研究所(Touch Research Institute)所長、タミー・フィールド(Tammy Field)氏は、「体に触れることで、大きな身体的変化が起きる」と話す。

「神経系が働く速度がゆっくりになる。心拍数と血圧が下がって脳波が落ち着き、それによってストレスホルモンのコルチゾールの分泌量も減る」

 高齢者は、新型コロナウイルスにかかると重症化しやすく、一人暮らしをしていることも多いため、孤立した状況では特に影響を受けやすい。

 米ハーバード大学医学部(Harvard Medical School)の神経生物学者で、感覚遮断を専門とするメアリー・カールソン(Mary Carlson)氏は、「必要に迫られて接触が制限されている今、一人暮らしの人は電話やビデオ通話を利用すれば、その穴埋めができる」と話す。