【4月12日 AFP】アイスランド南西部、同国有数の水深を誇る凍結湖のクレイバルバトン(Kleifarvatn)湖では、1か月に及ぶあるセミナーがじわり「熱い」。

 凍結湖付近は、氷点下6度まで冷え込む。ここで珍しいセミナーを開くインストラクターの一人、アントリ・エイナソン(Andri Einarsson)さんは、おのを手に、湖を覆う氷に穴を開ける。

 湖のほとりでは、首都レイキャビク郊外から来た参加者らが防寒用のジャンパーや厚手のセーターを着こみ、ニュージーランドの先住民マオリ(Maori)の民族舞踊「ハカ(Haka)」を連想させる動きや呼吸法でウオーミングアップする。

 エイナソンさんはAFPに対し、「彼らは(寒さに)体を合わせ、気力を高めていた」と説明した。

 エイナソンさんらの「寒冷療法」は、呼吸法と寒冷暴露、瞑想(めいそう)を組み合わせたもので、疲労やストレスを和らげ、免疫系を強化する効果があるという。

 呼吸法は、ビム・ホフ・メソッド(Wim Hof Method)の柱の一つを採用。同メソッドはオランダ人アスリート、ビム・ホフさんの名を冠したもの。ホフさんは2007年、短パン姿でエベレスト(Everest)の標高7400メートル地点まで登り、北極圏では裸足でハーフマラソンを完走している。

 凍えるような寒さの中、参加者らは湖のほとりでジャンパーやセーターを一枚ずつ脱ぎ、水着姿で湖へ入っていく。これはセミナーの総仕上げだ。参加者の多くは、ためらうことすらしない。4週の間に、徐々に寒さに慣れてきたのだ。

 セミナーは最初、10度の水から始まる。次には氷のたくさん入った風呂、最後には凍った湖に挑む。

 参加者らは2分間湖の中で耐え、吸う息、吐く息に集中する。これは熟練者によれば、冷たさによる痛みから気をそらすカギだという。

■すべての不安が消え去る

 ビム・ホフ・メソッドの科学は、あまり理解されていない。あるいは広く受け入れられていない。しかし参加者らはAFPに、メソッドの効果を確信していると語った。

 参加者のイングバル・クリスティアンセン(Ingvar Christiansen)さんは、プログラムが「(自分の)人生と考え方を完全に変えた」と語った。クリスティアンセンさんは、減量や燃え尽き症候群、離婚訴訟と闘っていた人生の試練の時を乗り越えたという。

「(冷たい湖から)出たとき、まるで2週間のスペイン休暇から戻ったかのように感じた。心配や不安、すべてが消え去るんだ」 (c)AFP/Jeremie RICHARD