【4月6日 AFP】 トロンボーンからバイオリン、パーカッションまで、それぞれの奏者が音を合わせる──だが、今回の演奏会はいつもとは違う。新日本フィルハーモニー交響楽団(New Japan Philharmonic)の60人を超える団員らがこのほど、テレワークで「合奏」した。

 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)でテレワークの潮流が広がる中、音楽界でも新たな試みが行われている。楽団員らが各自のパートを収録し、それらをテクノロジーを用いて重ね合わせることで、楽しげな合奏が仕上がった。

 テューバ奏者の佐藤和彦(Kazuhiko Sato)さん(44)は、テレワークでの演奏と聞いて、最初は信じられないと思ったという。「そうはうまくいかないだろうと……半分だまされたような感じだった」

 しかし、演奏会が中止、延期され、楽団員が家で身動きの取れない中では、これが音楽を届ける唯一の方法だった。

 バイオリン奏者のビルマン聡平(Sohei Birmann)さん(35)は最初、テレワークの演奏を楽観していた。

 ビルマンさんはAFPに対し「何年も何年も一緒に音楽を作っている仲間が、同じ動画を見聞きしながら弾くので、絶対合うだろうと思っていた」と笑顔で語った。だが「全く合わなかった」という。

 普段楽団で演奏する際は、他の団員の呼吸や目の動きを見ながら演奏を調和させる。今回はリズムや音の高さの微調整のため、何度か撮り直しを行わなければならなかったという。

■「音楽で励まされるという動きが必ず出てくる」

 トロンボーン奏者の山口尚人(Hisato Yamaguchi)さん(45)は、今回のような危機に見舞われると、音楽は無力だと感じることがあるという。前回そう感じたのは、2011年の東日本大震災の時。世の中には「音楽どころじゃない」という雰囲気があった。

 それでも、今後も愛する音楽を続けていくという山口さんは、音楽を通じて、世界中の誰とでもコミュニケーションが取れる、言葉はいらない、と話す。

「少し落ち着いてきた時に、やっぱり音楽で励まされるんだという動きが必ず出てくる」「僕らはまた必要とされる時が来るだろう」

 演奏はこちら(www.youtube.com/watch?v=kT9aO3qLisw)で鑑賞できる。(c)AFP/Harumi OZAWA