【4月7日 AFP】わずか3週間前、米首都ワシントンの郊外、メリーランド州の高級住宅街にあるフレンチ・レストラン「ラ・フェルム(La Ferme)」のウエーターだったミゲル・ロドリゲス(Miguel Rodriguez)さん(55)は人生を楽しんでいた。米経済は好調で、ロドリゲスさんの暮らしぶりも良かった。

 ところが一夜にして、すべては変わってしまった。新型コロナウイルス流行による州規模の封鎖に伴い、ロドリゲスさんが20年勤めてきた店は閉店を余儀なくされ、別のレストランでウエートレスをしていた妻も職を失った。

 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)で米国では瞬く間に数百万人の労働者が収入を失い、貧困に陥った。この危機によって露呈したのは、世界一の経済大国・米国でますます広がる深刻な格差だ。

 真っ先に打撃を受ける中低所得家庭には、貯蓄というものがほとんどない。「2008年の金融危機からようやく立ち直った数百万人の米国人にとって、とてつもない打撃だ」と、米シンクタンク「外交問題評議会(Council on Foreign Relations)」のエドワード・オールデン(Edward Alden)氏は言う。

 同氏によると、実質賃金は経済危機後8年かかって回復したが、低所得労働者の間でも伸びるようになったのはここ2年ほどのことだ。昨年は一部の州が最低賃金を引き上げたことなどで、過去20年間で最も賃上げペースが加速した。だが、「今回の危機によって失業が大幅に増え、賃上げの効果は消えてしまうだろう」とオールデン氏は指摘する。

 3月の非農業部門の就業者数は前月比70万1000人減となり、約10年続いた伸びは突然止まった。失業率は過去45年で最高の4.4%に上った。3月の最後の2週間で1000万人近い労働者が失業保険を申請した。米国は社会的セーフティーネットが乏しく、貯蓄率は約8%と極端に低い。英拠点の民間調査・コンサルタント会社オックスフォード・エコノミクス(Oxford Economics)の首席エコノミスト、グレゴリー・ダコ(Gregory Daco)氏は「突然の失業は、サービス部門の低所得層に集中している」と話す。