【4月4日 AFP】米海軍の原子力空母「セオドア・ルーズベルト(USS Theodore Roosevelt)」艦内で発生した新型コロナウイルス感染の対応をめぐり艦長を解任されたブレット・クロージャー(Brett Crozier)大佐が、大勢の乗組員の声援を受けながらグアム(Guam)に停泊中の同艦を去った。3日に公開された動画で明らかになった。

 空母から撮影された動画の中で、クロージャー大佐は乗組員らに短くあいさつした後タラップを一人で歩いて下船し、埠頭(ふとう)で待っていた車に乗り込んだ。乗組員らは甲板で手拍子をしながら「キャプテン・クロージャー、キャプテン・クロージャー」と声を上げた。

 セオドア・ルーズベルトは3月にベトナムを5日間公式訪問してダナン(Danang)に寄港。その後、数十人の乗組員が新型ウイルスに感染していることが判明し、同空母は3月28日にグアムの米海軍基地に到着した。

 3月31日に米国の2紙が、乗組員4800人をできるだけ下船させ、その大半を隔離するよう国防総省の上層部に求めたクロージャー艦長の書簡について報じた。これに怒った米国防総省は今月2日、クロージャー艦長を解任した。

 ダナン寄港は外交上重要で国防総省上層部の承認を得ていたにせよ、新型コロナウイルスの影響について同省で懸念が高まっていた中、あえて乗組員が感染するリスクを取って寄港に踏み切ったクロージャー大佐を批判する向きもある。

 民主党と無所属の上院議員17人のグループは、国防総省の監察官にクロージャー艦長の解任について調査するよう求めている。

 米大統領選でドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領の対抗馬となる最有力候補となっている民主党のジョー・バイデン(Joe Biden)前副大統領は、クロージャー艦長の解任は「権力者に真実を語るとどうなるかを示す恐ろしいメッセージ」だと述べた。(c)AFP