【4月3日 AFP】ハンガリーが新型コロナウイルス対策の非常事態法で、首相の権限拡大や非常事態宣言の無期限延長を可能としたことに対し、欧州各国で懸念が広がっている。

 民族主義のビクトル・オルバン(Viktor Orban)首相率いる与党が権勢を振るうハンガリーの議会は先月31日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて非常事態法を可決。政府が新型ウイルス危機が収束したと判断するまで、無期限で非常事態の延長を可能にすることを含めた幅広い権限をオルバン氏に与えた。 

 こにれ対し欧州委員会(EC)のウルズラ・フォンデアライエン(Ursula von der Leyen)欧州委員長は2日、「特別な」懸念を抱いていると表明。同氏は、新型ウイルスの世界的な大流行(パンデミック)に対処するために、欧州連合(EU)加盟国は異例の施策を講じる必要があると認めつつも、「行き過ぎた施策があることに懸念を抱いている…特にハンガリーの状況を懸念している」と述べた。

 今回可決された新法では、非常事態の延長に必要とされていた議会の承認が不要になる。また非常事態宣言の期間中は選挙を実施できない。さらに新型ウイルスや対策についての「虚偽」情報の流布には最高5年の禁錮刑が新たに導入され、「虚偽」の記事を発表したジャーナリストにも適用される可能性がある。

 与党フィデス・ハンガリー市民連盟(Fidesz)が3分の2を占める議会は、法案を賛成137、反対53で可決。非常事態法は31日の午前0時に施行された。

 ハンガリー政府のゾルタン・コバーチ(Zoltan Kovacs)報道官は、「われわれは批判されているだけではなく、政治的な魔女狩りと組織的な中傷キャンペーンの対象にされている」と述べ、同法への批判を一蹴した。

 一方、人権団体や報道機関、そして一部のEU加盟国はこのハンガリーの非常事態法について、過去10年にわたり同国を牛耳ってきたオルバン氏の権力掌握手段ではないかと懸念を示している。

 1日には、EU加盟国のうちフランス、ドイツといった大国を含む13か国が「一部の非常事態措置の導入によって、法の支配や民主主義、基本的人権などの原則が侵される危険性について深刻な懸念を抱いている」とする共同声明を発表した。だが、ハンガリーを名指しはしなかった。

 また2日には、欧州議会(European Parliament)の中道右派政党、欧州人民党 (EPP)に連なる各国内政党13党が、オルバン氏が党首を務めるフィデス・ハンガリー市民連盟を除名するようEPPに求めた。また同じ13党は、欧州委員会に「ハンガリーの状況に強く対処するよう」求めた。この要求に署名した各国内政党の党首の中には、ギリシャとノルウェーの首相も含まれていた。(c)AFP