【4月3日 AFP】新型コロナウイルスの流行で世界が混乱に陥る中、医療従事者と患者を守るための器具を3Dプリンターで出力し、差し迫った医療器具不足を回避するための複数の計画が急ピッチで進められている。

 こうした取り組みは、フランスやイタリアなど複数の国で行われている。世界の国々で不足し始めているのは、防護用のフェースバイザーやマスク、人工呼吸器の部品といった必需品ばかりだ。

 フランス・パリでは1日、市内にあるネカー(Necker)小児科専門病院の外科医が立ち上げたプロジェクト「3D COVID」が正式に始動した。パリ公立病院連合(AP-HP)によると、このプロジェクトよって「大量の医療用具を生産する」ことが可能となり、「今回の流行期における空前の器具需要を満たすことができる」ようになるという。

 今回のプロジェクトでは、市内コチン病院(Cochin Hospital)の横にある公園に「ミニ工場」を設け、約60台の3Dプリンターを用意した。これらの機器を使い、市内全域の医師や看護師、その他の医療従事者から要望のあるさまざまな器具を生産する。

 AP-HPによると、バルブ、注射器のプランジャー(内筒)、挿管、人工呼吸器の器具、硬質マスクなどの生産が早急に開始される予定という。

 3D COVIDプロジェクトを統括しているネカー病院の医師、ロマン・コンサリ(Roman Khonsari)氏は、「器具の種類や複雑さにもよるが、1日に300個、週に最大で3000個の物品を生産できる見込みだ」と説明している。

 顎顔面外科医である同氏は、3D印刷技術を用いた手術の計画や人工移植物開発など、3D印刷技術が有する可能性について長く言及してきた。そして、2019年11月、財団「Gueules Cassees(破壊された顔面)」からの資金援助を得て、ネカー病院内に3D技術専門の研究所を開設している。同財団は、第1次世界大戦(World War I)での負傷で容姿が損なわれた退役軍人らを支援するために設立された。

■24時間体制

 3D COVIDプロジェクトは、仏高級ブランドグループ「ケリング(KERING)」などから資金供与を受けている他、医療用3D印刷技術を専門とする仏新興企業Bone3Dからも専門知識の助力を得ている。

 始動後は24時間体制で生産を監督するため、技術者3人が交代で現場に入る。まずは、ポンプ装置の部品、人工呼吸用マスク、防護眼鏡、感染リスクを減らすために肘で開けられるように特別に設計されたドアの取っ手など、比較的シンプルな器具から始めるという。

 コンサリ氏は、「中には防護服といった、3Dプリンターでは生産できない装備品もある。だが、必要とされている物品全体の4分の3は、3Dプリンターで生産可能だ」と説明している。