【4月3日 AFP】新型コロナウイルスの感染拡大を受けて医療現場に限界が迫る欧州で、獣医師たちが人命救助に参戦しつつある。対人医療にも利用可能な医療機器を提供したり、ウイルスの検査・分析を支援したりする動きが広がっているほか、緊急時の医療ボランティアに登録した獣医師も数千人に上る。

「われわれの専門技能や医療機器、強い責任感は、人命救助の一助となるだろう」。スイス獣医師会(SVS)は公式ウェブサイトでこう宣言し、「人命は動物の命より尊い」として可能な範囲で医療現場を支援するよう会員らに呼び掛けた。

 フランスでは獣医師1万8000人のうち約5000人が、政府の募集した医療ボランティアに登録した。現場への配備はこれからとなる。

 スペインの首都マドリードの獣医師会によれば、市内では獣医師らが医療現場で看護師を補佐したり、仮設病院で医療チーム運営や医療機器の取り扱いを担ったりしているという。

 だが、支援したい気持ちは強くても、獣医師にできることは限られている。「われわれは動物への挿管方法なら知っているが、人への挿管はどうだろうか。技術は同じではない」と、仏パリを中心とするイルドフランス(Ile-de-France)地域圏獣医師会のブリュノ・テシエ(Bruno Tessier)会長は指摘した。

 自身も政府の医療ボランティアに登録したというテシエ氏は、獣医師を新型コロナ治療の最前線に送ることは「誰も提案していない」と強調。医療ボランティアとして現場に配備される場合は、補佐的な役割を担うことになるとの見方を示した。

「新型コロナの症状のある人への対処の仕方や問診、トリアージならわれわれにも分かる」と同氏は付け加え、「招集がかかるのを待っている」と語った。(c)AFP/AFP bureaus