【4月2日 AFP】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行の中心地となった中国・武漢(Wuhan)を封鎖した中国当局の決断は、ウイルスの拡散を遅らせ、70万人以上の新規感染を防いだ可能性があるとする論文が3月31日、米科学誌サイエンス(Science)に発表された。

 中国、米国、英国の共同研究チームは、感染者数の発表や公衆衛生に関する情報、携帯電話の位置情報の履歴を使ってウイルスの拡散について調査を実施。流行の最初の50日間に中国当局が実施した大規模な移動制限により、国内の他の都市が独自の規制を策定、施行するための貴重な時間が生まれたと指摘している。

 論文の共同執筆者で英オックスフォード大学(University of Oxford)研究員のクリストファー・ダイ(Christopher Dye)氏は報道発表で、「中国の制限措置は、感染の連鎖をうまく断ち切り、感染力のある人と影響を受けやすい人の間の接触を妨げることで、功を奏したとみられる」と述べている。

 中国政府が2か月以上前に武漢の封鎖に踏み切った際には劇的な措置として受け止められたが、今や外出制限の対象は世界人口の半数近くへと拡大しており、封鎖措置は急速に常態化しつつある。

 英インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)の研究チームは30日に発表した論文で、厳格な外出制限措置により欧州11か国で合わせて最大5万9000人の命が救われた可能性があると指摘。調査対象とした国々の大半で、外出制限によりウイルスの拡散ペースが大幅に抑制された可能性が高いと結論している。

 武漢での規制が徐々に解除され、人々の生活が少しずつ正常に戻りつつある中、中国をはじめ世界各国にとっての問いは、移動制限が解除されたらどうなるのかということだ。サイエンス誌の論文の共同執筆者、北京師範大学(Beijing Normal University)の田懐玉(Huaiyu Tian)副教授(疫学)は、「居住者や国外からの感染者により再び感染が拡大する可能性を、われわれは強く認識している」と述べている。(c)AFP