デビューから13年を迎えたマセラティ・グラントゥーリズモ。生産はすでに終了し、MC20と呼ばれる新型スーパー・スポーツにまもなくバトンタッチする予定だが、はたして熟成を重ねた最終型の走りは、いかなるものだったのか?

村上 マセラティ・グラントゥーリズモについて何をさておいても言わないといけないのは、これが本当に最後のモデルだということ。すでにイタリアでは生産を終了している。

齋藤 もうモデナ工場の生産ラインも片付けられている。

村上 そこでは5月の終わりに登場する新しいスーパー・スポーツカー、MC20を造ることが決まっている。MCはマセラティ・コルセ、つまりマセラティ・レーシングだね。

上田 フェラーリ・エンツォと兄弟車のMC12ってモデルもありましたけど、あれは12気筒でしたよね。20ってどういう意味なんですか?

村上 2020年の20。今年はマセラティ新時代の幕開けであり、節目の年。キーワードはニュー・エラ。ついに電動化もはじまる。

上田 グラントゥーリズモはオールド・エラの最後の最後なのか。

村上 それなのにマセラティ・ジャパンは広報車を用意した。新車で乗れるのもこれが本当に最後。だから是非ともということで取り上げた。

上田 奇しくも試乗車もMCというスポーツ・グレード。価格は2257万円ですが、450万円ほどのオプションを装着しています。

齋藤 でも、MCっていう名前が付いているけど、これはGTだよね。

村上 なにせ名前がグラントゥーリズモ=GTそのもの(笑)。

齋藤 2+2人乗りでホイールベースは長く、変速機もトルクコンバーター式のATだから、変速スピードは上がっているとはいえ、さすがにデュアル・クラッチ式のようにはいかない。乗るといかにもGTだった。

上田 ところが見た目はそうじゃないんですよね。ドライ・カーボンのボンネットだけをクリア塗装にして目立たせていたり、スポーツカーというか、すごくレーシーな仕立て。

齋藤 本当はイタリアのナショナル・カラーの落ち着いた青とかが似合うはずだよ。

荒井 そんな外観の割には、乗るとちょっと重い気がした。同じ自然吸気でも、フェラーリ812が横に並ぶと、ボンネットの位置なんか、ぜんぜん高かったし。

齋藤 全長も長いし、動きそのものはおっとりしている。

上田 約1年前にオープンカー特集でグランカブリオに乗った時はボディのゆるさを感じたけど、クーペも乗ってみるとゆるかったですね。

齋藤 いかんせん基本設計が古いからね。特にボディは普通のスチール・モノコックだから、オープン・ボディを作る前提でサイドシルを強化していたりしても、なかなか厳しい。でも、このプラットフォームとパワートレインを使ったクーペだったらここしかないっていうところに全部バチン!! と追い込んである気がしたよ。

村上 たぶん一緒に乗ったクルマがみんな強烈だったから余計におっとりしていると感じたんじゃないかな。でも、スポーツカーにもいろんな味つけがあるけど、マセラティはやっぱり色気だと思った。乗っているとエロティックな気持ちよさがある。

上田 僕はつくづくエンジンを味わうクルマだなって思いました。この4.7ℓV8は、マセラティがフェラーリ傘下に入った時のエンジンが由来なんですよね?

齋藤 デトマソが倒れて、フィアットがマセラティの面倒を見ることになったけど、彼らはフェラーリに押しつけて、それであの自然吸気エンジンが生まれた。ただしフェラーリがゼロから開発したわけじゃなくて、マセラティで開発していたものを、最後にフェラーリの冶金技術や特殊材質を加えて完成したもの。フェラーリ側はそれを流用して、新しいV8やV12を派生させて、自分たちのエンジンにしたんだよ。